【未読】数字の「違和感」で見抜く不正の兆候
はじめに
分析的手続についての本
会計不正により影響を受ける主な勘定科目
①買掛金
②繰延税金負債
③仕入高、輸入経費
④売上高、売上総利益
⑤仕入高、買掛金
⑥売上高、売上総利益
⑦有形固定資産、減価償却費、貸付金
⑧現金預金
⑨消耗品費
⑩売上高、売上割戻高
⑪売上高
⑫棚卸資産(商品)
⑬売上高、売掛金
⑭売上高
⑮売上高、売上原価
⑯有形固定資産
⑰工事原価
⑱棚卸資産(仕掛品)
⑲定期預金
⑳営業利益、営業CF
基礎知識
不正の分類
会計不正の分類
「粉飾」の手口の分類
粉飾の基本は、業績を楽観的に見積もること
例えば、
・棚卸資産の評価損回避:陳腐化していないと見積もる
・固定資産(有形/無形/投資その他)の減損回避:価値が下がっていないと見積もる
・繰延税金資産の取り崩し回避:課税所得が持続的に発生すると見積もる
※通常は、信用取引(売掛金/売上、仕入/買掛金)をしているため、以下のように相手勘定が連動して改竄される
・売上(収益)を過大計上すれば、売掛金(資産)も過大計上される
・仕入(費用)を過小計上すれば、買掛金(負債)も過小計上される
①資産を大きく/負債を少なく見せる(BS観点)
・資産の過大計上
・単価×数量を増やす
・負債の過小計上
・単価×数量を減らす:簿外負債、簿外借入れ
②利益(収益-費用)を大きく見せる(PL観点)
・収益の過大計上
・単価×数量を増やす:押込販売&翌期返品、など
・収益計上の前倒し:長期請負工事における工事収益の前倒し
・費用の過小計上、など
・単価×数量を減らす
・費用計上の先送り
「横領」の手口の分類
①現金預金や棚卸資産を横領する(現金化/横流し)
→資産を過大計上することで隠蔽する(実際には資産が減っているのに、損失を計上しない)
②個人的な支出を経費として精算する(精算不正)
→費用を過大計上することで隠蔽する
③購買担当者がキックバックを受け取る
・取引額の水増し:購買担当者(発注担当者、調達担当者)が、特定の仕入先(調達元)を優遇して購入する代わりに、水増し発注して(仕入先に水増し請求させて)、差額分をキックバックとして受け取る
→「仕入/買掛金」を過大計上することで隠蔽する
・例:100円の商品を120円で発注し、仕入120/買掛金120を計上する。20円分は営業担当者から個人的に受け取る。または、10円ずつ購買担当者と営業担当者で分ける。(会社からすると20円無駄に高く仕入れてしまっていることになる)
④販売担当者がキックバックを受け取る
・取引額の水増し:③において、販売担当者も分け前を受け取ることがある
・不正な値引き受注:販売担当者(営業担当者)が、特定の得意先(販売先)を優遇して安価で販売する代わりに、不適切なキックバックを受け取る
Episode1 仕入在庫の横領(仕入債務回転期間分析)
前提
登場人物
・製造部:購買依頼書を作成する
・購買部:仕入先に購買発注を行う
・経理部
業務プロセス
・製造部は、購買依頼書を作成して、部内承認後、購買部に提出する
・購買部は、購買発注書を作成して、部内承認後、仕入先に提出する
基礎知識:仕入債務回転期間分析
仕入債務回転期間が増加している場合、以下が疑われる
①単純に直近の仕入高が多かった
②支払いが滞留している買掛金がある
追加調査として、
・どの仕入先で増加しているのか?
・その仕入先に対して、売上債権や未収金・未収入金は増加してないか?滞留していないか?(資金繰りが悪化しているかも?架空循環取引に巻き込まれているかも?)
・支払いが滞留している買掛金はあるのか?(年齢調べ表を使う)
シーン1 買掛金回転期間の急増を検出した
仕入先別買掛金残高明細表
以下について過去3年分の推移が分かる
・期末の買掛金残高
・年間の仕入高
・買掛金回転期間(仕入債務回転期間)
購買依頼書
・製造指図書が添付されている(何のために購買するのかが分かる)
購買管理規程
・何円までの購買がどの役職で承認できるのかが分かる
買掛金補助元帳
仕入先ごとの買掛金の推移が分かる
シーン2 仕入れた材料は納品されていた
納品書
・仕入先から入庫実績があった証拠
請求書
・自社で検品を行った証拠
実地棚卸報告書
・帳簿残高と実地棚卸数量のギャップが分かる
在庫預かり証
・外部倉庫に格納されている在庫が分かる
・通常、在庫寄託限度額が定められており、外部倉庫や外注先に原材料・仕掛品・製品などが過度に寄託されないようにコントロールされている
シーン3 仕入れた在庫は転売されていた
参考:仕入債務と売上債権
回転期間や回転率の算出に必要な他、営業CFの算出にも使う
仕入債務として扱われる勘定科目
・買掛金
・支払手形
・電子記録債務
・工事未払金(建設業)
・営業未払金(物流業)
※「通常の未払金」や「未払費用」は仕入債務に含めない(本業=主たる営業活動以外の費用にかかる債務であるため)
売上債権として扱われる勘定科目
・売掛金
・受取手形
・電子記録債権
・完成工事未収入金(建設業)
・営業未収金(物流業)
※「通常の未収金」や「未収収益」は売上債権に含めない(本業=主たる営業活動以外の収益にかかる債権であるため)
売上原価として扱われる勘定科目
・売上原価
・商品売上原価
・製品売上原価
・不動産売上原価
・不動産賃貸原価
・完成工事原価
https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/shiharaikaizen/2020/201221shiharaikaizen03.pdf
参考:回転期間
仕入債務回転期間
・DPO(Days Payable Outstanding)
※仕入債務回転率:APTR(Account Payable Turnover Rate)
売上債権回転期間
・DSO(Days Sales Outstanding)
※売上債権回転率:ARTR(Account Receivable Turnover Rate)
棚卸資産回転期間
・DIO(Days Inventory Outstanding)
Episode2 買収価格水増しによる利益供与(企業価値評価)
前提
登場人物
・X社:Y社の下請けメーカー、非上場、オーナー社長はX社を売却したい
・代表取締役(100%株主)兼社長
・Y社:上場、買収できる企業を探している
・代表取締役兼社長
・財務担当取締役
・監査役
・社外監査役(公認会計士)
・監査法人
業務プロセス
・買収価格の決定
基礎知識:監査法人と被監査会社のコミュニケーション
経営者とのディスカッション
・監査手続のうちのひとつ
・被監査会社のMMRを評価するための情報収集
監査役とのコミュニケーション
・三様監査のため
シーン1 経営者とのディスカッション
財産調査報告書
・「不動産登記簿謄本(全部事項証明書)」「不動産鑑定評価書」が添付されている
・現状の純資産の時価:
・税効果が考慮されているか?
・土地の地目(宅地、工業地など)は正しいか?
・収益還元価値
・将来CFの見積り根拠は妥当か?
・現在価値への割引率は妥当か?(金利以外にも考慮すべきことはある)
株式価値算定報告書
・買収対象の企業の企業価値が算定されている
計算書類
・PL
・BS
・SS
・注記表
シーン2 監査役とのコミュニケーション
・X社の企業価値は高く見積もられていた(当初から買収価格を決めて辻褄合わせされたものであった)
・高く見積もられた企業価値は、将来CFがY社からの優遇取引条件(高額で仕入れる)を前提としたものであった
シーン3 取締役会
略
参考
略
Episode3 架空輸入による粉飾(比率分析)
前提
登場人物
・国内電機メーカー
・中国の下請け会社
・監査法人
業務プロセス
略
基礎知識:比率分析
通常は一定割合になることが想定される比率について、推移を確認することで異常点を発見できる(分母と分子の推移を個別に眺めるだけでは気付けない)
・倉庫保管料/在庫残高
・製造単価=製品原価/製品数量
・仕入割戻率=仕入割戻/仕入高
・売上割戻率=売上割戻/売上高
・売上総利益率=売上総利益/売上高
輸入経費比率
輸入経費比率 = 輸入付帯費用 / 輸入仕入高
シーン1 輸入付帯費用が未計上の月があった
輸入品の仕入高/売上高
・以下が分かる
・出港地別
・四半期ごとの推移と累計
・予定と実績
・「売上高/仕入高」は通常は一定
輸入付帯費用(コンテナフィー)
・仕入高に比例する費用(費用単価に変動がなければ、輸入経費比率は一定なはず)
シーン2 船荷証券が偽造されていた
略
シーン3 実際には輸入されていなかった
略
参考:輸入販売
在外製造拠点から販売先に直送納品する場合の仕訳
各国の製造拠点:製品在庫は倉庫に保管
↓
各国の出港地:月次で船積みして船荷証券を発行(仕入計上)
↓
船荷証券を販売先に譲渡(売上計上)
貨物代表証券
商品を受け取る権利を示す証券、商品自体を物理的に引き渡せていなくても、この証券を譲渡すれば売上を計上できる
・陸運:貨物引換証
・海運:船荷証券(B/L、Bill of lading)
・空輸:航空貨物運送状(AWB、Air Waybill)
・倉庫業者が発行:倉荷証券
Episode4 突出した売上総利益率―不正売上検知システム
前提
登場人物
略
業務プロセス
略
基礎知識:「網羅性の検証」アプローチ(不正会計の発見時)
3つのアプローチを使う
①人アプローチ:不正実行者が他の不正を行っていないか?
②拠点アプローチ:不正発生拠点(内部統制が弱い)で他の者が不正を行っていないか?
③手口アプローチ:類似の手口で他の者が不正を行っていないか?
基礎知識:通例でない取引の見つけ方
・担当者別、商品サービス別で、月次推移を比較する
・データの発生源のシステムを比較する(会計システムに直接登録しているのか、周辺の業務システムからデータ連携されているのか)
・伝票日付(原始証憑上の日付=取引イベントの発生日)/起票日付(会計システムへの登録日)/仕訳日付(会計上の日付)の差
シーン1 不正売上検知システムを導入した
シーン2 証憑原本が偽造されていた取引を検出した
・「網羅性の検証」アプローチにより件外調査を行う必要あり
シーン3 件外調査を行った
・アンケート調査を行った
・会計システムから仕訳データを抽出し、不審な仕訳を特定した
・売上のみで売上原価が登録されてない
・伝票日付と起票日付に乖離がある
参考
略
episode5 あまりに短い買掛金回転期間―突如現れた、優良(?)新規仕入先
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
シーン1
シーン2
シーン3
参考
episode6 周期的に変動する売上利益率―どうする?循環取引
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
シーン1
シーン2
シーン3
参考
episode7 低すぎた減価償却費率―「弥勒菩薩」のお値段は?
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
シーン1
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シーン3
参考
episode8 数日遅れの現金の銀行預け入れ―店舗現金の着服
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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シーン2
シーン3
参考
episode9 多額の消耗品費―たび重なる臨時発注
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
シーン1
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参考
episode10 激減する売上割戻比率―売上リベートの先送り計上
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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シーン3
参考
episode11 土壇場の営業黒字(利益)―リース取引の悪用を暴け!
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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シーン3
参考
episode12 「新品」の長期在庫―よみがえる滞留商品
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode13 増幅する売掛金回転期間―粉飾の黒幕は誰だ?
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode14 謎の売上高追加計上―決算調整の「禁断の果実」
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode15 利益が売上を超える怪奇―「仮面」の告白
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode16 新規建物過大計上―落札後の追加工事
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode17 失速する工事原価―「原価の付け替え」に御用心
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode18 仕掛品の過大評価 ―製品を上回る価値?
前提
登場人物
・
業務プロセス
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基礎知識
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シーン3
参考
episode19 不定期の定期預金 ―資産の減損回避策
前提
登場人物
・
業務プロセス
・
基礎知識
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参考
episode20 黒字利益と赤字キャッシュ・フロー―「売上高」獲得の甘い罠
前提
登場人物
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業務プロセス
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基礎知識
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参考
完
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