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月歩堂についての覚書き

大学を卒業して実家の山形に帰郷した私はある日、郵便受けに摩訶不思議な冊子が入っていることに気付きました。冊子には「月歩堂商品カタログ」と書いてあります。誰に宛てたものかわからなかったので、とりあえず祖母に尋ねました。祖母は懐かしそうな顔をして「田所さん、まだ元気にやっているんだねぇ」と呟きました。興味が沸いたので詳しい話を祖母から聞いてみることにしました。以下は祖母の脱線気味の話を私が理解した範囲でまとめたものです。

「月歩堂」は明治13年創業の舶来品とこの世の摩訶不思議を扱う店「日月堂」のご主人の息子田所幸久がのれん分けという形で始めました。幸久には兄がいて兄も同じくのれん分けをしてもらい「日進堂」という屋号で商売を始めていました。2店は最初の頃は順調に経営していましたが、経営センスは兄よりも弟の方が優れていたらしく「日進堂」は昭和恐慌の煽りを受けて倒産寸前に追い込まれてしまいました。資金繰りに困り果て兄は業界のタブーを犯してしまいます。彼は他人の夢を売ったのです。業界では「人の夢売り」は重罪です。なぜならば夢を売られた人は生涯夢を見れなくなるからです。結局、「日進堂」は倒産してしまい兄は行方不明(一説では満州に渡ったと噂されているそうです)、弟は兄の遺した在庫を引き継ぎ現在も細々と経営を続けているそうです。

商品販売は会員に送られるカタログでの通販のみ。カタログは不定期で忘れた頃に届くそう。我が家では亡くなった祖父が幸久さんと親しく会員になったということでした。母は「どう考えても胡散臭い。詐欺よ詐欺」と言いますが私はそうは思いません。面白そうな商品がありましたらまた報告したいと思います。

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