印象 金沢 昼

〔水島京子〕

山形から金沢までは5時間位でしょうか。最近は新幹線が走るようになってこれでも随分近くなった気がします。朝早く自宅を出発して着いたのは昼過ぎでした。4か月ぶりの金沢はさほど時間が経ってないにもかかわらず別の街になったような気持ちになりました。学生時代よく行った店は閉店しその場所に新たな店が生まれていることに驚くばかりです。

駅に着くと片町までのバスに乗りました。目的は犀川堂へ行くことです。犀川堂は学生時代にお世話になった古本屋さんです。大里君の手紙ではお店に新しい店員さんが働き始めたみたいでその方に興味津々です。店主のおせんべいのような丸顔のおやじさんとも久々に話してみたい。私は整理券を握りしめわくわくしながらバスの車窓から金沢の街を眺めました。

犀川堂のガラスの引き戸をカラカラと開けると奥の方から若い女性の声で「いらっしゃいませ」と聞こえてきました。おずおずと奥へ進むとダークブルーのエプロンを着た可愛らしいお嬢さんが机にちょこんと座りパソコンをいじってました。私は小さく頭を下げるとお嬢さんもコクリと頭を下げます。

「お、京子ちゃん。久しぶり」

振り返ると店主のおやじさんが古本を抱えて立ってました。私が親しげにおやじさんと話しているとお嬢さんが「店長のお知り合いですか?」と聞いてきました。おやじさんはああそうだったと頭をぺチぺチ叩きお互いの自己紹介をしてくれました。

お嬢さんの名前は笠井さんと言い私の大学の後輩でした。好きな本も私の好みと似ていて私と笠井さんはすぐに仲良くなり、おやじさんに時間をもらって近くの北欧カフェでお茶する仲になりました。私が住んでいた頃と街は変わってしまったところもありますが、それでも金沢は私の知る金沢でした。変わっていく部分はあるものの変わらない部分は昔と変わらないのが古都の魅力ですね。


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