植物の図鑑-カリガ版-
〈320ページ「ヒマワリ」〉
春先に知人から短い手紙と一緒に送られてきたヒマワリの種5つを庭に撒いた。しばらくすると5つの芽が出てきたのだが、その中の1つが物凄く太く立派な芽で感心した。しかし、芽が出て一週間くらいしてその芽以外が枯れてしまった。原因はわからない。立派な芽はというと以前より生命力が増したようでツヤツヤしている。
それから一か月後、芽は私の身長位になった。茎も随分と太くなり片手でやっと掴めるくらいの太さである。その成長ぶりに驚くばかりだったが、あることに気が付いた。ヒマワリの周辺に雑草が生えていないのだ。毎年今の時期は草むしりに追われると言うのに今年は随分と楽できそうだった。
夏が来て私は庭の異常に気付いた。ヒマワリ以外の庭の植物が一向に育たないのだ。苗を植えてもすぐに枯れてしまう。ヒマワリはもうすでに私の背丈の2倍はある。
数日後、ヒマワリは花を咲かせた。太陽のようにギラギラ照り付けるような黄色だった。花が咲くと自宅の周りにはもう植物が育たなくなっていた。これは明らかにヒマワリが周辺の生命力を吸っているに違いなかった。私は怖くなりヒマワリを切ることにした。植木用の剪定ばさみではもはや切ることもままならなかったので倉庫から昔誰かが使っていた鉈を持ち出し、思い切り振りかぶって太い幹を切りつけた。5・6度目くらいでヒマワリはギシギシと音を立てて倒れた。花は恨めしそうに私を見ていた。
ヒマワリを切り倒して数日後、自宅周辺は緑が戻り短い秋を謳歌した。やがて冬になるとヒマワリのことなどすっかり忘れていたが、冬のある日、例の知人から郵便が届いた。封を開けるとヒマワリの種が5つ入っていた。
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