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12.癒しの場が仕事の場

 日々の疲れを癒すこと、といえば、わたしの場合はひとりでカフェや喫茶店で本を読み、態度や言動で”良いお客様”を装うことだ。

 このエッセイは、自分が毎日何を思い考えているかを自分で知るため、そして友人・知人への近況報告も兼ねて書いている。
 日々の過ぎていってしまう小さなことをすくって、自分という棚にはなにが収まっているのか、棚おろしの意味をこめて綴りたい。

 身支度を整え、お店に向かい、店の入り口をくぐって席につき、オーダーをして本を読んで待ち、コーヒーなどを楽しみ、また少し本を読んで、会計の時にお店の方と話をして、「ごちそうさまでした」と言って店を後にし、家に帰る。

 この一連の流れ、行なっているのはわたしであるが、多分普段のわたしではない。ちょっと芝居がかっていると言ってもいい。

 休日、カフェを舞台に(本の内容は純粋に楽しんで)、こう在りたいという人にいっときなりきることによって、日々の疲れを発散させているのだ。

 こんな振る舞いがこの店にふさわしいんじゃないかと1人考え、もしかしたら店員さんが喜んでくれたかもと勝手にうれしくなる。…自分で書いていて少し気味が悪い。


 ところで今年になってから、お気に入りのカフェに就職してしまった。 
 癒しの場が仕事の場になり、そりゃあお客様であったいままでのようにはいかなくなった。それは覚悟していたことだ。

 もっと恐れていたことは、職場以外のカフェや飲食店でも心から落ち着けなくなってしまうのではないか、ということ。

 わたしのことだから「色々な店員さんから学ぶべき」と度を越して張り切りまくったり、似たような光景から職場での失敗を思い出してしまうのではないかと心配していた。

 しかし今のところ、それはない。

 以前よりは、切り替えスイッチが効くようになってきたのだろう。
 あいかわらず、カフェや喫茶店で本を読み、「良い客」を意識してひとり静かに良い気になることはわたしを癒し続けている。好きなままでいることが出来ている。

 好きなことを仕事にして、苦しいなぁと思うことが多かったが、今回は今のところ良い感じだ。この調子でほどほどに(とはいえ誠実に)頑張りたい。

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