家、くる?
「えっまだ付き合ってないの?!」
「ちょ!しー!!」
「おーーい!口より手動かせよー!
開店時間すぐだぞー!」
「「すいませんでしたー!」」
「声でかいよ」
「いやだって!え!俺てっきりもう
付き合ってるんだと思ってたわ」
箸立てに箸を補充しながら質問攻めにあう。
「だってこの前もご飯行ってなかった?!」
「行った」
「ん?なんならこの前友達と
この店来てなかった?」
「来てた。焼き鳥もりもり食ってた」
「内緒できたん?」
「いや、友達と行くね!って連絡きた」
「えっ、、なんで付き合ってないの?」
そーだよ、そらそーだよな。
みんなそう言うよ。
俺だってわかってる。
俺が一言付き合ってくださいって言ったら
多分俺たちは付き合うことになる。
そしてきっと、あの子もそれを待っている。
世間ではよくこの曖昧な期間が楽しいって
いうけど、俺はそんなこと思わない。
自分の意気地のなさにいつも嫌気がさす。
「ほんと、なんでだろーね」
全ての作業が終わり開店時間になった。
バイトをしてる時間は余計なことを
考えないですむ。
だけどカップル客の彼女の髪型が
あの子に似ていると少しドキッとする。
そして顔を見てほっとする。
ぁあよかった、あの子じゃなかった。
「お疲れー!今日もう片付けいいから
2人ともあがりなー!」
「え!いんですか?やったー!」
「ありがとうございます。」
着替えているとまた質問攻めにあった。
「で、なんで付き合わないの?!」
「なんでって、、」
「男ならさ!バシーっときめよーぜ!
好きだー!付き合ってくれー!みたいな!」
「いやー、、うんまぁ、、うん。」
「なんだよ!だって絶対両想いなのに!
むこうも言ってくるの待ってるって!」
「や、それは、、わかってるんだよ、、」
「なに!じゃなんで言わないの!」
「、、元彼が、なんか嫌な奴だったみたい」
「元彼?えっなに?DVとか!?」
「詳しくは知らないけど、あまりいい人じゃ
なかったみたいで。いい思い出が少ない
って言っててさ。だからなんかこう、
慎重になってるってゆうか、、うん、」
「でもお前はいい奴じゃん!問題なくね?」
「、、ありがと。でもなんか、舞い上がって
気持ちがふわふわしてる時に付き合って
また傷つけたらどーしよとか考えだしたら
止まらなくなってさ。もぅ傷ついてほしく
ないんだよ。これ以上。」
「ふーん」
「自分でも考えすぎだなーとは思うよ」
「んー、でもさ、俺があの子だったら
付き合う前からこんなに考えてくれてる
時点で嬉しいけどね」
「え?」
「それだけ大事に思ってるってこと
早く伝えてあげたら?」
普段はふざけてばかりなのに
いつになく真剣な顔をしていた。
「そうだよな。うん、そうする。」
「お!次いつ会うの!?」
「実は明日、、」
目配せをおくるとニコッ笑って
「オッケ!きめてこーーい!!!」
と文字通り背中をおされた。
「前は駅前の居酒屋だったよな?
次どこ行くの?」
「次は家の近くの居酒屋。
あの子が行きたいって言ってたとこ。」
🎧世田谷ラブストーリー
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