大学生

日本の大学生は勉強しない、と言われているのをよく見かけます。実際どうなのかはわかりませんが、そうだとしてもおかしくないなぁとは思います。なぜなら自分の学科ならほとんど勉強しなくても卒業できると思うからです。

この「勉強しない」というのは批判的な意味を持って使われる事が多いと思いますが、私は別に勉強しない事が悪いとは思いません。今回noteで書きたいのは、大して勉強していなくても自然と身についていることってあるんじゃないかなぁということです。どういう事か、の前にちょっとこの前の経験談を書きます。

つい数日前のことです、中高の同級生とオンラインで話しました。彼らは大学に入ってからもそれなりの頻度で会うような関係です。きっかけは午前四時頃、一人がLINEグループで作業しながら話したいと言ったことです。たまたま起きていた私は参加し、たちまち合計四人になりました。

みんな作業をしながらだったのですが、うち一人(以後、Aとする)が資料を見ながらゼミ選びをしていました。そこから転じて、それぞれの卒論の話になりました。ゼミ選びをしていたAは工学部なのですが、その中でも材料工学(?)が専門で、特に鉄が好きだそうです。ものすごく楽しそうに喋るのですが、よくわかりませんでした。そのうちAは自分で「自分の専門の楽しさを伝えるのって難しいな」と言いました。そして続けてこんな話をしました。

ある研究者が新しい義手を発明しました。それはものすごく性能が良く、今までのものとは比べ物にならないそうです。しかし欠点が一つだけ、重過ぎる事でした。その研究者は別の先生に相談しました。すると、「材料をアルミに変えると良い」と助言しました。元々鉄で作る前提だったので、重さの問題は解決しました。めでたしめでたし。

これはAが大学の先生から聞いた話だそうです。これを聞いたAは、「なんでそんな簡単な事を思いつかないのだろう?」と思ったそうです。しかしすぐに自分が知っているのは材料工学が専門だからだと気づいたそうです。材料工学を勉強しているAからすると、軽くて丈夫な素材としてアルミを使うのは当たり前の発想だったそうです。

ここで何が言いたいのかというと、一応専門であるだけで、他の人より断然詳しいということです。Aは中高の頃にテストで9割以上総合1位を取っていた優秀な人ですが、たかが学部生です。それでも専門の事に関してはプロより詳しかったということです。

これを聞いて私はなるほど面白いなと思い、自分にそういうもの、即ち専門の人からは常識だけれどみんなが知らなさそうなことがないだろうかと考えました。一番に思いついたのは「源氏物語」についてです。例えば、「源氏物語」の主人公が光源氏だということは多くの人が知っているかと思います。しかし光源氏が物語の中盤で死ぬという事は意外と知られていないような気がします。また「源氏物語」の作者は紫式部というのも有名ですが、紫式部が書いた「源氏物語」は残っていないということもあまり知られていないと思います(現在、教科書に載っているのは室町時代(江戸も含む)に写された本を元にしています)。

またその後、数学の話になりました。私以外の三人は理系学部生なので、私にはさっぱりついていけません。しかし興味はあったので色々と教えてもらいました。その中で「非線形数学」の話になった時、面白いことにAとBの話が食い違ったのです。理由はやはり専門の違いでした。Aは材料工学が専門なのに対して、Bは宇宙工学が専門です。なので具体例が全然噛み合わないのです。数学における非線形の定義は二人とも共通していましたが、Aにとっての非線形数学とBにとっての非線形数学は別物だったのです。

以上のような事があって、大学ってやっぱり面白いなぁと思いました。学部や学科が違うだけでこんなに物の見方が変わり、知らない事をたくさん知っています。何かをする時に使うツールなんかも、自分が知らないものを知っているんだろうなと思います。勿論同じ学部・学科でも興味や考え方はそれぞれなんだろうけれど、もっとそれ以前の部分の話です。

何の話だったかな?と思ったら、大学で大して勉強していなくても自然と身についていることってあるんじゃないかなぁということを書くつもりだったようです。つまりそういうことです。

まあ私は文学部生ですが、文学史等について高校生より劣る部分もたくさんあると思います。電話をしていたCは理工学部ですが、行列については使い所がよくわからんと言っていました。それはきっと授業では習ったけれど、AやBのように実際に使う機会が無いからでしょう。多分そういうのもいっぱいあります。でももっとそれ以前の話、例えば行列の足し算や掛け算ですら文系学部生のほとんどはできないと思います。10分もあればできるようになるのですが、知る機会がなければできるようにはなりません。そういう簡単な事は大した勉強をしていない大学生でも他の人より詳しいのだろうと思います。

ここから個人的な話です。私は小学生の頃から多面的に物事を見ることを大切にしようと思ってきました。しかし大学生のこのような多様性を目の当たりにして、全然考えが追いついていないなぁと思いました。もしかしたら高校の頃に文理が分かれた時からそれは始まっていたのかもしれません。以前から学部による多様性には気づいていたので、少しでも他の思考を知りたくて他学部の勉強も始めました。これが良いことなのかはわかりません。もしかしたら大学で専門的な勉強をする上では一つの点からの見方をもっと磨くことの方が大切なのかもしれません。でも今のところは楽しいのでいいかなと思っています。まずは中高の同級生の話についていくために数学から。非線形数学はまだわからないけれど、線形数学でも知らない事がたくさんあります。そういうわけで、この春はがっつり数学をやるつもりです。

以上、専門の勉強をしない言い分でした。

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