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【追補】やっぱり2024年の保育園は激戦かも論

前回のこちらのエントリーに多くの反響、もといツッコミを頂きまして、ごもっともなご指摘でしたので本稿にてご紹介します。
2024年に勝どき・晴海の保育園に入れるのか問題|中田 (note.com)


1.新規流入層は子育て層が多いよ論


引っ越しは就職、結婚、出産などの人生の節目に行われる傾向が強いため、HARUMI FLAGやPTKに新たに入居する人たちの方が保育園需要が高いというご指摘はごもっともです。私は世帯数に対する1歳児需要を高々2%程度と前回のエントリーで書きましたが、「いやいや3.8%くらいあるんじゃない?」という検証を2LDKさんがしてくださいました。

2LDKさんはTwitterを使っています: 「中田さんの興味深い考察!私も考えてみました! まず流入世帯数です。 総数は中田さんの記事通りですが、子育て世帯になりうる対象を絞り込むため以下を考慮します。 晴海フラッグ(5,632戸) ・スカイデュオ(1,455戸:入居2025/10) ・グランクレール晴海フラッグ(158戸:シニアレジ)…」 / X

検証のために幕張ベイパークをサンプルとして持ってこれることに惚れました。常日頃から多数のマンションと自治体情報を見ていないとできない芸当です。なぜこの例が素晴らしいかというと、新設マンション単体の需要を検証する上で好都合だからです。幕張のある千葉市美浜区の保育園分布を見てみると、幕張ベイパークの周り半径300メートルくらいだけ保育園が存在せず、軽く陸の孤島みたいな位置づけだとわかります。つまりこの保育園の需要は凡そ幕張ベイパークの居住者と見てよいでしょう。

Google Mapsより作成。「文」の赤ピンが保育園、円の中心が当該のHOPPA幕張ベイパーク

更に、千葉市は「保育園別」の待機児童数を公表しているのも検証に好都合です。東京都中央区(をはじめとする多くの自治体)は保育園別の空き状況を公表していても待機児童数は公表していません。そして美浜区の待機児童数を見てみると、他の保育園はすべてゼロか1桁なのに、HOPPA幕張ベイパークだけが35人と異常値を示していることがわかります。

千葉市HPより作成。2023年8月時点

更に、美浜区全体では1歳児枠は余っているという点も重要です。美浜区は年齢別の空き状況はわからないのですが(どの自治体も一長一短ですね)、3歳未満全体で見ると美浜区だけで191名もの空き枠があることがわかり、1歳児枠も相応の空きがあるとみなすことができます。つまり、いま幕張ベイパークに住んでいる親御さんは、300メートル以上先のどこかの保育園には入れているものの、できることなら自分のマンションの中にある保育園に転園させたい、と思って入所待ちに登録しているとみなすことができます。幕張ベイパーク以外からわざわざHOPPE幕張ベイパークに300メートルかけて通おうとする人は少ないでしょう。

例外的に、幕張ベイパークの南に隣接する「打瀬」という場所についてはHOPPE幕張ベイパークにも入所待ち登録をしている可能性があります。打瀬には住宅が多いわりに保育園は多くなく、打瀬地域における保育園4か所の1歳児空き枠はゼロで、入所希望者が11名いる状況です。この地区の人たちにとっては、保育園が集中している真砂や高洲といった場所に通わせる距離に比べてHOPPA幕張ベイパークも同等もしくは近いため、HOPPA幕張ベイパークの入所待ちにも登録している可能性があろうかと思われました。

Google Mapsより作成。赤円の打瀬地区から見た、打瀬以外の最寄り保育所の距離(青円)

というわけで、HOPPA幕張ベイパークの待機児童35人の全員が幕張ベイパークの住人とは限らず、1歳児保育の総需要というわけではないでしょう。とはいえ、仮に幕張ベイパークの待機児童が25人と仮定してもなお世帯数に対する1歳児需要率は3%程度はあることになり、キャパシティが足りないという結論に大差はなさそうです。
(6) 中田:‖さんはTwitterを使っています: 「こ、これは素晴らしい検証…参りました🙇‍♂️HOPPA幕張ベイパークというサンプリングがさすがです。…」 / X

なお、前回のエントリーで「新規流入者の人口分布に大差ないのでは」と書いたことには根拠があり、末尾で触れたようにほぼタワマンしか存在しない晴海でも人口分布は他の地域と大差ないからです。しかし一つ付言すべき事実がありまして、月島地区で1歳児の保育園枠が余っているとはいえ、実は晴海では1人分しか余っていません。

中央区HPより2023年9月の空き状況。左から3列目が1歳児枠。

これは何を示唆するかというと、タワマンが林立する晴海内部ではやっぱり1歳児を全員収容することはできておらず、隣接する勝どきや月島の保育園まで少々遠征して預けているということです。つまり、この点でも幕張ベイパークと似ていて、「少し移動すれば枠はあるけれども自宅の近くにはない」という状況なのだと考えられます。

2.2023年はHARUMI FLAGの入居が遅れたから空いてるだけだよ論


かちぺんさんはTwitterを使っています: 「実際に中央区で保育園の相談してきました😌もともと中央区は晴海フラッグ2023年入居に合わせて保育園爆増させましたが、コロナで晴海フラッグ入居が1年遅れ、さらに出生数減がありました。この2つの要因が重なったため2023年はボーナスステージでしたね🐧」 / X

これは完全に死角でした。コロナがなければ2023年現在は既にHARUMI FLAGの入居が始まっていたはずであり、それに合わせて増設された現在の保育園キャパシティは今年だけが特別に空いているだけなのだと言われると納得であります。

3.コロナの影響の出生減はもう少し続くかも…?

コロナの影響で出生数が減ったのは間違いなく、2023年の空き枠が多い一因となっていますが、しかし残念なことに(新規入居者にとっては災い転じて?)この出生減の反動は2024年には来ないのではないかと見ています。なぜなら、出生減の主因は「産み控え」ではなく「婚姻減」だからです。昔から夫婦1組あたりの出生数は2人前後でほとんど変わっておらず、日本の出生率の低下は専ら婚姻率の低下が寄与しているということはよく知られていますが、これはコロナ下でも現れました。コロナの恐怖がピークだった2020年に産み控えをしてその後に反動が来るのであれば2021年に出生数は底打ちしてもよさそうなものですがそうはならず、2022年も減少を続けています。これは2020年に婚姻数が激減したからであり、出生数の減少幅ともほぼ一致します。別の言い方をすると新規婚姻数の減少率に比するとやはりコロナ下でも既婚者の出生数は大して減っていないのです。

日経新聞 2023年2月28日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC2823M0Y3A220C2000000/

2021年にやっと婚姻件数も底を打ちましたが、2022年になってもなお2020年程度の婚姻数しかないことがわかります。つまり2023年の出生数も、残念ながら2020年の婚姻減の影響を受けた2021年度程度の数しかないのではと予測できます。

上記のグラフは広く1都3県(HARUMI FLAGおよびPTKの主たる検討層の居住域と想定)のものを使いましたが、中央区だけ見ても出生数の推移は似たカーブを描いています

中央区HPおよび中央区役所へのヒアリングより作成。あえて縦軸の下限は0に設定

もともと中央区は人口流入地域だということもあって2020年に出生数が増えているのは1都3県の動きとは異なりますが、2022年になっても前年比4%の出生減少が続いている点は同じです。ここから婚姻数のわずかな回復により2023年の出生数が上向いたとしても2021年の2,010人程度と予測されます。従って、2022年~2023年の出生の結果を受けた2024年の1歳児枠も実はまだ需給は緩んだままなのではないかと推測されます。

もちろん、4%程度であれば出生数が回復するというポジティブな見方もでき(保育園競争的には悲観的な見方ですが)、その場合は月島地区の1歳児の需要予測を4%ほど、具体的には10人程度引き上げる必要があります。

4.本当の地獄は2025年以降だ論


のらえもんさんはTwitterを使っています: 「ファミリー住戸って、入居から2〜6年位がベビーラッシュです、つまり、入居時が一番問題のピーク(既に足りない疑惑あるが)ではなく超深刻化するのはそこから更に3年後です。 この2〜6年後のボーナスタイムでは、ファミリー間取り10につき1人が毎年産まれてくる計算です。…」 / X

確かに結婚して引っ越しして一段落してから子づくりする人が多いであろうことを考えると本当のベビーブームは2025年以降なのかもしれません。その頃の保育園のキャパシティが分からないので需給は何とも言えませんが…

楽観論(1)中央区内の引っ越しも多いよ論

馬神 傑さんはTwitterを使っています: 「更に言うと、ワイ家庭みたいに中央区間での引越しする想定1歳児クラスもあるから保育園キャパは思ったより大丈夫じゃないかな。 ただ、24年4月入園枠に申込もうすると、申込期限の23年11月には中央区に住民票が無いとダメな気がする。25年4月枠なら引越してからだね。」 / X

なるほど確かにHARUMI FLAGやPTKの申込者の中には勝どき・ザ・タワーやTHE TOKYO TOWERASなど近隣の中央区内からの需要もかなり多いと聞きました。PTKでは来場者の3分の1くらいは中央区内か豊洲など近隣の人という話も聞きましたので(豊洲からの引っ越しは新規扱いになってしまいますが)そこまで真水の新規需要はない可能性はあります。

なお、上のTweetで「引っ越し前の段階で住民票がないとダメな気がする」とありますがそんなことはありません。2024年4月時点で中央区に引っ越す誓約書みたいなものを書けば大丈夫です。

楽観論(2)新規入居者の子供はそんなに幼くないかも論

上ののらえもんさんの投稿にもあるように、HARUMI FLAGもPTKも値段が値段なだけに、与信があるのは比較的高齢の世帯かもしれず、その場合は子供が1歳という可能性は低くなるかもしれません。確かに仮に我が家がどちらかに当選したとしても保育園は使いませんし。また、1歳の子がいたとしても、お兄ちゃんかお姉ちゃんがいれば有利という事情もあります。きょうだいがいる子には加点あるいは優先的配慮がなされるからです。その点で、入居者のファミリー世代分布がアラフォー以上に偏っているのであればさほど1歳児需要は逼迫しないかもしれません(代わりに学童が大変とかそういう話は別に置くとして)。

その他:そもそも近隣の保育園に入れたいんじゃ論

はい、ごもっともですし、だからこそ幕張ベイパークでも現在の晴海でも「地区全体では空き枠があるけれども近隣の保育園は入所待ち」という状況が発生しているのだと思います。

しかし!コロナ前までは勝どきというのは「子供が保育園に入れない地域ワースト2」だったことを考えれば、現在の状況は劇的に改善しています。

2017年の保育園激戦状況。ダイヤモンドオンライン 2017年9月28日付、沖有人氏分析

このランキングは東京内のものですが、待機児童問題はほぼ東京の話だったことを考えると、勝どき駅は全国ワースト2くらいのひどい状況だったということがわかります。

中央区の待機児童数はこの後も増え続けましたが、コロナを機に一気に減り、2022年には中央区は待機児童数ゼロを宣言しています。つまり選ばなければどこかには入れる自治体になりました。

中央区HPより

我が家はコロナ前に勝どきで保活をしましたが、当然のように認可保育園には全落ちして、港区の認可外保育園までタクシーで毎日通園していました。職場は丸の内だったので、中央区→港区→千代田区の三角通勤を半年続けて点数を稼ぎ、無事に認可保育園に入れたという次第です。その頃に比べたら「数百メートル以内のどこかには入れる」なんて夢のようです。

そんな地獄と比べられても困る、という声が飛んできそうですが(その通りです)つい数年前までここは地獄だったのだ、と思うと、ピッカピカのHARUMI FLAGやPTKから少々遠めの保育園に通うくらいどうってことないと思え…ないですかそうですか。

なお、最近は待機児童が減ってきたことで「次は保育の質が問題だ」「次は学童だ」などと際限なく要求が高まっている段階ですが、確かに保育園と一口に言ってもその運用は本当に玉石混交で、「絶対にこんな園に入れたくねぇ!」と思うようなひどい園も存在するので、多少枠が余って評判が悪い保育園が淘汰されるくらいの方が良いとは思っています。

勝どき周辺の歴史を踏まえたご参考まで。

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