50オンナが歓楽街で働きだしたお話⑤

高速餅つきかよ…
実際に接客をするようになってからの
正直な感想。
「人と話をする」というのが
こんなに難しいことだったとは…
ものすごい勢いで杵でついてる餅に
合いの手を入れている人の気分。
ひとつ間違えれば大惨事。
そうならないよう
最新の注意をもって会話に聞き入る。
入れなさ過ぎて
あと入るタイミングをはかりすぎて
笑顔になりきれず
気味の悪い薄笑いを浮かべながら
カウンターに立っていることもしばしば。

余談になるが
わたしはドラムが叩けない。
手と足がそれぞれ明確な意思を持って
別々に動くなんて
考えられない。

いまわたしの目の前で行われているのが
感覚的にまさにそれ。
お話を聞きながら
絶好のタイミングで会話に入りつつ
お酒の量を見て
絶妙のタイミングでお酒をつくる。
なんすか?皆さん超人すか?

初心者故、当たり前のルールも
よくわからない。
そんな時は、先輩の女の子が
すっ…と寄ってきて
小声で囁いて去っていく。
え?神ですか?

お酒の作り方が覚束なければ
お客さまが
「初心者?がんばれ!」と
言ってくださる。
ママは
「新しいことを始めるのは
何歳からでも遅くはないよ」と
言ってくれる。
人間って優しい…

初めて下界に降りてきて
人間の優しさに触れた
モンスターのような気持ちになりながら
北新地の夜は過ぎていきました。


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