2021映画私的ベスト10

※基本的に致命的なネタバレはしていませんが、一部内容に触れるため、作品の情報を一切いれたくないという人は読まないでください。

▼みた全ての映画の感想は
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第10位「花束みたいな恋をした」

サブカル好きカップルが別れる映画。

「500日のサマー」や「マリッジストーリー」などと同系統の、ひとつの恋愛や関係がはじまって終わる、その刹那を切り取ったお話。

趣味が一緒だからって何の意味もないんだぜ、という事実を突きつけながら、それでもこの二人にしかわからなかった「何か」があると観てるこっちも思ってしまうような、心がぐちゃぐちゃになる作品。

観ている自分が「年老いた」ことをナチュラルに痛感させられるクライマックスのファミレスのシーンでは、劇中の誰よりも自分が泣く事になった。

第9位「フリーガイ」 

人間だと思ってた自分が実はゲーム内のプログラミングされたモブキャラだったという映画。

ゲーム内(グランドセフトオート系の自由に動ける系のゲームというのもミソ)のキャラがメインのお話かと思いきや、そのゲームをつくっているプログラマーの話がメインで、自分のゲームのアイデアを盗まれた証拠を探すプログラマーとそれを揉み消そうとするプログラマーの抗争にこのモブキャラが巻き込まれるという話。

ただ、「モブキャラ」という光をあびることのないプログラミングをされたキャラクターが、自分の意思をもって、自分の設定とは違う行為をすることで、ゲーム内さらには世界に影響を与えて行くという様は、どうしたって現実の社会と比べざるを得ない。あたえられたプログラムを逸脱して無双していく様はエモい。誰にでもある運命に逆らいたいという衝動。

そんな社会システム的な話かと思いきや、あれ、実はそういう映画だったの?という驚きの展開をみせ、意外な結末に着地。「ああ、この映画ってこういう映画だったのかー」とわかる美しいラストの余韻にしばらく浸かっていたい映画。

第8位「明日への地図を探して」(Amazon original)

ずーっと1日をループしている青年が、同じく1日をループしている女性と出会いに恋に落ちる映画。

ループものというあまりにもベタな設定ながら、「すでに主人公がループしまくっていてその世界のルールを全部掌握している」というところからはじまる最初から主人公最強映画。要するにこの映画の本質は「ループから抜け出す」というものではないことが、映画冒頭から示される。

1日で記憶以外はすべての事象がリセットされループしてしまうので、ループ内で出会った彼女の電話番号はスマホに記録することができないため、必死で番号を覚えるというのは面白かった。

繰り返される日々の中で尊さを見つけるという点では「アバウト・タイム」に似ている価値観を持っているが、この二人(とくに女性側のほう)は一筋縄ではいかない。ループしていることも、ループから抜け出すことも嫌というアンビバレンスな状態になってしまうなか、二人が出す結論は…。

第7位「マリグナント 狂暴な悪夢」

ある日突然、殺人鬼の殺人行為の現場のリアルな夢が見れるようになってしまった女性の話。

アクションもホラーも撮れるジェームズワン監督がとにかくやりたいことをやりまくった映画。冒頭こそホラー映画のように見えるが、実はこの映画のほんとのジャンルは、、、。

過去映画から類推できるあらゆる予測を裏切るトンデモ展開、しかも、映画史に残るであろう「アクションシーン」を生み出した今作。まさに令和の「マトリックス」。アクションがアクションたる所以は、ジャンルを飛び越えてもそれを物語としてまとめられるということなのかもしれない。

第6位「空白」

娘を交通事故で亡くした父親が、そのきっかけをつくった男に執拗につきまとう話。

誰かが圧倒的に悪いわけではないのに事態がどんどん悪い方向へいってしまうとう点で「スリービルボード」と似ているといわれることも。ピタゴラスイッチのように悪いことが連鎖していく感じや、キャラクター造形など、よくよく俯瞰してみるとかなりシステマチックで機械的な脚本に感じるが、その脚本が炙り出すのは、人間の本質的なダメなところと、そして良いところ。一見どう考えてもタチのわるそうな古田新太演じる父親が絶対的な悪には見えないという絶妙なバランスで進むシナリオのうまさ。

人は一人では生きていけないということ、失ってしまったものとどう向き合うかということ、それについて思いを馳せながら後半、そしてラストにひたすら泣かされた。

第5位「ラーヤと龍の王国」

バラバラになってしまった国を1つに、そして、父親を取り返すため、世界中を冒険する少女の話。

「人を信じられるか」というテーマ1点で最後まで突っ走る冒険活劇。シンプルな話ながら、アクションシーンのかっこよさ、キャラクターのおもしろさなど、物語としての質が安定している。誰が見てもこれを「つまらない」という人はいないだろう。

かつて1つだった「龍の王国」は、魔物により荒廃し、主人公含め各国のキャラたちは家族を失っている。残された者たちが、それぞれ手を取る展開は、ベタながら胸にくるものがあり、だからこその「ラスト」の展開でその感動は倍増する。

108分という短さで、「スターウォーズ」「アベンジャーズ」の要素を体感できるタイムパフォーマンス的にも最高な冒険傑作。

第4位「tick,tick...BOOM!」(Netflix)

30歳手前の売れないミュージカル作家が、友人が就職などで夢から離れていってしまうなか、それでも作品をつくり続け夢を追いかける話。

ミュージカル映画。私はミュージカル映画は苦手だが、この作品は「RENT」をつくったジョナサン・ラーソンの伝記的な映画、つまり、「ミュージカル作家の人生の話」なので、劇中の作品ってことで違和感なくミュージカル展開がはいってくるので、ミュージカルが苦手な人でも楽しめる。

とにかく曲が良すぎるのと、アンドリューガーフィールドの歌が最高。

映画や演劇や音楽といったカルチャーは世の中を変えないのか?変えられるのか?といった問いを、当時は理解されなかった概念を通じて、「現代」の私たちに考えさせられる展開もエモい。またジョナサン・ラーソンのこの後のことを知っていると、「光る一瞬の青春の尊さ」という点にもまた胸を熱くさせられる。

第3位「ミッチェル家とマシンの反乱」(Netflix)

アナログな父親とデジタル大好きな娘のいる家族が、世界を乗っ取り人間を支配した機械(AI)に立ち向かう話。

小ボケも交えながら最後までノンストップの飽きる部分ゼロの大冒険活劇。

めっちゃSF展開ながら、メインは父親と娘の関係、いわゆる親子もの。父は娘を理解しないし、実は娘も父を理解していない。この冒険の中で、少しずつだが、二人が歩み寄っていく様が下手なセリフではなくナチュラルな「アクション」で表現されるのがとても映画的で好き。「デジタル」「アナログ」そのどちらも否定しないという構造も説教臭くなく表現されているのも見事。

個人的には「人類は機械に支配され狭い部屋に閉じ込められるけど、人類はwifiがあるから誰も文句を言わない」という設定が最高にシニカルで好き。

第2位「ドライブ・マイ・カー」

妻を亡くした男が、偶然出会った専属ドライバーとの交流を通じて、もう一度自分と向き合う話。

あまりにも凄すぎて、語ることもできないくらい完璧な映画。3時間が一瞬で過ぎる。

映像がとにかく綺麗で、車の走るシーンの美しさや、俳優の様など「美しい」「かっこいい」が連発してそれだけでも大満足。車の走行音、セリフの「音」、ライターの音、食卓の食器の音・・・濱口監督のリズムに運ばれる感じは、音楽の無い「音楽」映画。劇中劇の最後など、音が無い瞬間に最も音が鳴っている、と感じさせるなんて、なんて鮮やかな演出。

妻との思い出の車のなかにどうしても人を入れたくない主人公と、それに入り込むわけではなくあくまでも仕事として運転を全うする女ドライバーと、そこにズカズカと入って行く軽薄な男の対比もよかった。

そんな軽薄な男・岡田将生のキャリアハイともいえるクライマックスの芝居。まさに「今何かが起こった」瞬間だった。

第1位「すばらしき世界」

刑務所に13年間入っていた男が、出所後社会に馴染もうとするが、社会はそれを拒む。男はまた罪をおかしてしまうのかそれとも・・・という話。

正直、「え、これが1位なの?」と思われる人も多いかもしれないが、やっぱり今年見た映画の中で1番泣いたし(といってもトップ10ほぼ全部泣いてますけど)、役所さん演じる三上がなんとか社会に馴染もうとするが、まわりのせいだったり、自分のせいでうまくいかない、でも変わりたいと強く願う様に心打たれた。

私は西川美和作品をみて「映画ってほんとにおもしろいな」と感じた人間で、いまも定期的に「ゆれる」や「蛇いちご」「ディアドクター」など初期作品は繰り返しみている。

ご本人がどのように思っているかわからないが、西川さんの作品は「ブラックジョーク」だと思うし、その中にほんの数ミリ人間の愛情が溶け込んでいる感じが好きなのだが、今回はその匙加減が最高で、「なんだよ人間!人間ってもうだめだろ!」「なんだよ社会!社会なんて終わってる!クソだ!最悪だ!」「もうやだ映画館から出たいやめてくれー!」と客が思うピークのところで、そっと優しく背中をさすってもらう、というか。わりと最近の西川さんの作品って、あんまり優しく背中をさすってもらった感なかったが、今回はベストなタイミングでのさすられ方で、ひたすら泣いてしまった。

劇中では、仲野大賀演じるディレクターが三上の密着映像を制作するというシーンが描かれるが、おそらくその映像は劇中では公開されることはない。つまり、三上の人生が映画の中の世界の人々の広く伝わるということはない。そういう意味で、僕らはこの映画を通してのみ、三上の人生をみることができる。

ないものを見せる。虚構は真実にもなる。

振り返れば、西川監督は首尾一貫してそれを描いてきた。これはその集大成。

いや、そもそも映画とはそういうものだった。虚構が真実になるのが映画だ。

来年も楽しい映画を沢山みれたらいいな。


【2021年見た2021年公開映画】


ドライブ・マイ・カー 
最後の決闘裁判 
ロン 僕のポンコツボット 
Mr.ノーバディ 
tick tick boom!
レッドノーティス
マリグナント 
ゴジラvsコング 
ドントブリーズ2
アオラレ 
空白 
21ブリッジ 
クワイエットプレイス2
ラーヤ 龍の王国 
シャンチー テンリングスの伝説
フリーガイ 
スーサイドスクワッド 
BLUE
竜とそばかすの姫
ブラックウィドウ 
あの夏のルカ 
キャラクター 
ノマドランド 
ウーマンインザウィンドウ 
オキシジェン
ミッチェル家とマシンの反乱 
ラブ&モンスターズ
シン・エヴァンゲリオン 劇場版 
明日への地図を探して
すばらしき世界
花束みたいな恋をした 

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