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避役

「はて、なかなかうまく馴染まないな…もう少し時間がかかりそうだ」
「こっち来んな! 近くに馴染んでいないのがいるとこっちの身まで危なくなるんだよ!」
「あれ? どの部分に馴染ませればいいんだ? もうすっかり表面色の変え方忘れちゃったよ」
「右目に映るそこのおじさん、後ろ足の色が変。左目に映るきみ、尾っぽの色も忘れないで」
「本当に色って馴染ませなきゃいけないのかな? 私はもう地の色のままでいい気がしているの」
「馴染ませないでイキってんじゃねーよ! 実名晒すからな」

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突然、遠景が一変した。
これまで、長い時間をかけて自身の表面色を変化させ、自分のいる近景と遠景とを調和させ馴染ませてきていたのに。
遠景が急に新しくなったら、今までの自分の色がこきこきしてるように感じる。人にはどういう風に見えるのだろう? 聞いてみたいけど…まずはSNSで周りの人の色を観察してみよう。

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自分の表面色が近景とは変わらず調和しているように映っていて、遠景とのコントラストが強烈な違和感を放っているのに気づかない人。気づいていない振りに忙しい人。
よく見れば近景の色も変わってきていて、考えてみれば近景も、人の色の集合体の乱反射だ。
僕の近景はあなたの遠景で、あの人の近景は彼女の遠景。
…そういえば、僕の地色はどんな色だったっけ。

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