寂しくなるなぁ(2024.2)

浪人・留年せず大学生活を送ってきたのであれば、私と同い年の人間はもうすぐ卒業し、新社会人として生活するか、フリーターとして自分の夢に向かって、もしくはその夢を探すために生活を送る。

素晴らしいことに、私と親交が深い人物は全員、この四月から全員学生を終える。
人と比べると私の友人数は少ないが、中には高卒で会社員の者や、高卒後会社員を経てフリーターになった者、など様々な経歴の人がいる。
我々大学生は、そんな彼らと、やっと肩を並べて社会と向き合うことができる。


中でも、最低数か月に一度のペースを絶やすことなく会っている友人のグループがある。
高校でできたグループで、全員浪人することなく大学に入学。入学した場所は違えど、誰も留年することなく、来月、足並みを揃えて卒業する。

先日、彼らと晩御飯を食べに行った。
そこには、私の他に四人いた。(以下A, B, C, Dとする)
前回会ったときにはまだ進路が確定していない人もいたため、改めて全員の進路先、主に4月からの勤務地について話した。

Aは東京へ。
Bは大阪へ。
C,Dは東京で数か月の研修を終えた後、地方へ。
私だけが地元に残る。

なんとなく、分かっていたことではあった。
A,B,Cの就職先は、以前から聞いていた。しかし、改めて、私以外誰も地元に残らないことを聞かされると、唐突に心に来るものがあった。いや、心に何かがやって来る、というよりは、心から何かが去っていく感触がした。
ご飯を食べ終えた後も、少し五人で話していた。しかし、今まで散々やってきた他愛のない会話も、あまり面白いと感じられなかった。
それは皆が今、引っ越しのこととか、今後の生活に関するスケジュールが詰まっている故なのかな、と思った。それ故に、会話にくだらなさが入る隙がなかったように思う。
もしくは、私だけがそう思っているだけかもしれない。想像以上に寂しさが心を埋めており、くだらなさにかまける隙がなかったのかもしれない。

家に帰り、余計に寂しくなった。

きっと皆、東京や大阪で働く中で、新しい仲間や友達ができ、充実した社会人生活を送るのだろう。そしてその期待は自分自身にもある。
しかし、未来への期待は、裏返せば不安にもなる。新しい仲間や友達ができず、どうしようもない社会人生活を送るかもしれない。
しかし地元を離れ都会で活躍する彼らと、地元に残り続ける私には大きな違いがある。

彼らは都心で挫折しても、帰ってくる場所がある。
それは彼らの親、家族、ひいては友達(つまり私)がいる場所だ。
この意識があるだけで、向こうでもかなり頑張れるんじゃないか?と私は勝手に思っている。

一方、私には帰る場所が無い。正しくは、帰る場所で戦おうとしている。
挫折した時に求める憩いの場が、戦場と一緒なのだ。
そして友人に頼ろうにも、当の友人は皆遠くへ行ってしまっている。

独りで行き詰った私は、辞職し、引きこもりのニートとして、中身の詰まっていないnoteをせこせこと更新し続ける…。

そんな妄想を浮かべては、未来への不安と未来にある寂しさを同時に噛み締め苦しくなるのだ。


私が件の晩御飯会で感じた寂しさは、未来にあるものだけではない。
現在の寂しさも、四人の会話によって浮き彫りにされてしまった。

会話は主に就職先、勤務地と、他にもう一つ。
「今の恋人との関係をどうするか」
という話題もあった。実はこの日の話題の6割はここに収束したように思う。
A,B,C,Dには恋人がいる。
私には恋人がいない。
この明暗の差が、私が面白いと感じられなかった一番の理由なのだろう。

恥ずかしながら、私は恋愛エアプ勢である。今まで恋愛というものを経験したことがない。
今までは友人間で行われる恋愛話にも首を突っ込んできた。当時は「恋愛」よりも「話」の部分にこそ重点があると思って会話に参加していた。
今思い返せば、恋愛話において、私の言葉は彼らにとってノイズで、迷惑でしかない。だって皆が重きを置くのは「恋愛」の部分なのだから。

その認識を最近になって改め、この日は、出てきた恋愛話のほとんどに口を挟まなかった。
どんどん深く、現実的になる恋愛話。
皆の恋人観が露わになり、話はずんずん進んでいく。頭に、真っ暗な洞窟に向かう探検隊が浮かんだ。
私は入口の日が差す場所から入口を覗く。中は数メートル先から真っ暗で、皆がどこまで進んでいるのかも分からない。

その取り残された寂しさや、先が見えないことに対する不安も、きっと作用しているのだろう。


そろそろ締めに入る。
件の晩御飯会の後、私の脳に浮かんだ言葉は「人間性の欠如」だった。
私は人よりたりない部分が多すぎる。
どうせ足りるためにはどうするか、なんて調べたり動くこともなくだらだらと過ごすのだろうが、いつかふとした瞬間に訪れる、何かの機会がもしあるのなら、それを逃すことなく生きていくことが出来たらいいな、と淡い期待を抱いている。

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