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改めて「助成金なんてあてにしてちゃダメだよな」と思う~障害者雇用調整金引き下げに際して~

今年4月から障害者の法定雇用率が、2.3%から2.5%へ引き上げられます。
昨年、法定雇用率達成企業の割合が50.1%となり、はじめて過半数を超えたわけですが、またちょっと厳しくなるかもしれませんね。

私たち持続未来グループは雇用率14.8%なので、特にこれと行った影響はないのですが、その影でもう一つ制度変更があります。
こちらの方はあまり話題になっていないのですが、私たちをはじめ多くの障害者を雇用している企業には大きな影響があります。


■ 障害者雇用調整金が引き下げられる


そのもう一つの制度変更というのは、障害者雇用調整金が引き下げられることです。

こう言うと、厚生労働省は「引き下げじゃないよ、引き上げもあるし、ただの調整だよ」って言うでしょうし、「障害者雇用調整金って何?」という反応もあるでしょう。

ではまず障害者雇用調整金とは何か。
これは、法定雇用率を達成した上で、さらに多くの障害者を雇用する企業に対して支払われる助成金です。
具体的には、法定雇用率を超えて雇用する人1人に対して、1ヶ月あたり27,000円が支給されています。年間なら27,000円×12ヶ月=324,000円ですね。

では、今年4が月からの引き下げ(調整)とは何かといえば、次のようなことです。
・障害者雇用調整金は27,000円→29,000円に引き上げる
・ただし、障害者を多数雇用している企業に対しては、法定雇用率を超えて10人までは29,000円支給するが、11人目からは23,000円に引き下げる
引き上げ、引き下げをミックスし、解りにくくしながら全体の支払額を抑制しようということです。

わかりにくいので、私たち持続未来グループを例にとって見てみます。
私たちの場合、法定雇用率を超過して40人以上の障害者を雇用しています。(実人数ではなく、「カウント」に基づく人数です)
仮に40人として、今回の引き下げがなかった場合、引き下げられた場合を比較してみましょう。(「引き下げがなかった場合」と書きましたが、これは確定事項です。確実に引き下げられます)

【引き下げがなかった場合】
40人×29,000円×12ヶ月=13,920,000円
【引き下げられた場合】
(10人×29,000円+30人×23,000円)×12ヶ月=11,760,000円

年間216万円の減収です。
要は、「多数雇用している企業ほど引き下げるね!」ということです。

■ いや、障害者雇用調整金って丸儲けじゃないから


上記のように実際の金額を書くと、丸儲けのように感じられるかもしれません。
しかし、そうではないのです。

私たち持続未来グループに限らずですが、障害者を多数雇用する企業の多くは次のようなことをしています。

・私たちのように知的障害者が多い場合、わかりやすいように作業マニュアル、テキスト、動画を整備する。
・資格試験を受験する際のテキスト、問題集などを理解しやすいように編集する。
・働きやすいようハード面も整備する。
・相談窓口となる社員を配置する。
・日頃の様子について、定期的に職場を巡回し把握する。
・同僚の健常者社員のケアを行う。
・社内での理解向上のための研修会などを開く。

こうして形式化できないこと以外にも「あれこれ愚痴を聞く」みたいなことにも時間をかけています。

これを、障害者雇用調整金は40人分頂きますが、全体では50人以上を対象にして行っていくわけです。
いきなり1000万円以上の金額を見ると「いいなあ」と思われるかもしれませんが、間違いなく経費として大部分(というか全て)は消えます。

■ でもやっぱり助成金なんて頼っちゃダメだよね

この引き下げ案が出たときに、私たちも霞が関の厚生労働省に呼ばれ、ヒアリングを受けました。
そこで、「たくさん雇用すればノウハウもあるからスケールメリットが生まれるのでは」という趣旨のことを言われたりもしました。

ちょっと待ってください。
当たり前ですが、人は一人一人違います。まして障害者は、その特性は様々です。確かにノウハウは集積しますが、決してスケールメリットが生じるものではありません。かなりのオーダーメイドです。
金八先生の「我々はみかんや機械を作っているんじゃないんです!毎日人間を作っているんです!」というセリフを思い出しました。

他にも言いたいことはたくさんあります。
ただ、結論として言えるのは、やはり助成金なんて頼ってはいけない、当てにしてはいけないということです。

国の財政状況はご存知のとおりですから、なんだかんだと理由をつけられていつ打ち切りになるかもしれない。そう考えてやって行かなくてはならない。それが基本なんだと改めて思っています。

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