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おすすめの本『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』

まったく考えもしなかったことに気づかせてくれるタイプの本があります。
これはとてもありがたいのですが、自分が整理せず漠然と抱えていたことを明確に言語化してくれるタイプの本に行き当たったときも劣らずうれしいものです。

今回まさにこのタイプの本に出会えました。
『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する「5つの原則」』です。

そもそも、読んだきっかけは、ビジネススクールの恩師が著者である吉田満梨さんを招いた勉強会を開催し、そこに招かれたからです。せっかく参加するなら、著書の1冊くらいは読んでおかないと。


■ 今まで主流だったコーゼーション(因果論)では不十分


今までビジネスの王道とされてきたのは、コーゼーションと呼ばれる手法でした。

競争分析やマーケットリサーチによって新しい商品をつくり、これを売るために環境分析による事業計画を策定し、計画実施のために必要な資源を獲得して事業を計画通り実行していくというもの。

それぞれの要素・段階が、論理的にきちんと因果関係で結び付けられ、合理的に物事が運ばれます。

例えて言うなら、特定の山の山頂に登るためにきっちりとルートを特定し、抜かりなく装備品を用意し、必要なメンバーを選抜してアタックするという感じです。

とても論理的なんですね。ケチのつけようがない。
ただ、現在のようにVUCAとも言われるような不確実性の高い時代に、コーゼーションだけでは対応できなくなっているとも考えられます。
(コーゼーションが悪いと言うのではなく、別の方法もあるのではないかということです)

つまり、現在は次のようなことが言えます。
・マーケットリサーチを行ったところで顧客ニーズが掴みづらく、そもそも顧客自身が自分に必要なものをわかっていない。
・成功が確実に期待できるやり方の特定ができない。
・計画通り実行することが目的化しがち、あるいは失敗を恐れがちになる。

■ エフェクチュエーションとは?


こうした状況に対して生まれたのがエフェクチュエーションという考え方です。

まず、新しい商品を売るといった目的ではなく、すでに持っている資源に基づいて事業をスタートすることが異なります。
すでに持っているもの、知っていること、余っているものなどから「何ができるか」を発想します。

次に、コーゼーションが期待される利益を目指すのに対し、エフェクチュエーションは損失が許容できる範囲で行動します。つまり、過度に失敗を恐れなくて良いわけです。

コーゼーションが組むべきメンバーを選抜するのに対し、エフェクチュエーションは多くの人と関わりを持とうとします。これは、事業への参画を求めるだけではありません。「ああ、そういうことなら自分は無理だけど別の人を紹介するよ」といった関わりでも良いのです。

また、コーゼーションは予期せぬ事態を「計画を狂わせるもの」として忌避しますが、エフェクチュエーションは予期せぬ事態をテコとして利用し、新たなチャンスに導くものとして歓迎します。

全体的に、コーゼーションは不確実な未来を予測によりできる限り不確実性を排除しようとするのに対し、エフェクチュエーションは不確実な未来を不確実なものとして受容し、手持ちの要素でハンドリングしようとします。

コーゼーションが前述したような山登りとすれば、エフェクチュエーションは手持ちの要素によって山登りを川下りにも変化させるわけです。

■ エフェクチュエーションは成り行き任せではない


こう言うと、エフェクチュエーションは行き当たりばったり、あるいは成り行き任せではないかと思われるかもしれません。

確かに起きる偶然を受け入れるという意味では似通った面もありますが、エフェクチュエーションは戦略不在ではありません。
不確実な状況と偶然に対して、無策に流れに身を任せて火消しに追われるのではなく、ハンドリングできる範囲を拡大することによって当初は想像もしなかったゴールを目指そうとするものです。

■ よく考えたら、これって自分が大切にしていることでは


しかし、よく考えたらこれって自分が大切にしていることです。
そもそも、私はすでにあった企業を引き継いだ=手持ちの資源からスタートしたわけですしね。

損失可能な範囲内で何度も打席に立つこと、人とのつながりあるいは事業の展開によって予期せぬ事態に対面し、その都度事業形態が増えたり変化したりしたこと。

まあ、それらをハンドリングできているのかと言われると心もとないのですが、以前では想像もしていなかった場所に立っていることは間違いありません。

■ 勉強会に参加して


こうして本を読んだ上で勉強会に参加したのですが、結果的にとてもよい機会でした。

勉強会自体がとても理解しやすいうえに、吉田先生の語り口も丁寧かつ的確で、予定時間が非常に短く感じられました。

さらに、同じテーブルの参加者と予想以上にしっかりと話ができて、新しい繋がりができたことからも、これからが面白くなりそうです。


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