見出し画像

小林製薬の一件から企業の借金について考える

今、小林製薬が、製造販売したサプリメントによる健康被害でえらいことになっています。
私の周りでは「新卒採用もやめたらしいし倒産するんじゃないか」みたいに話す人さえいます。

ということで小林製薬についてちょっと調べてみました。
と同時に、企業の借金について少し考えてみます。


■ 破綻する可能性は?


小林製薬は上場企業なので財務情報は公開されています。
財務諸表を見てみると、一言で言って優良企業なんですね。

バランスシートを見ても、純資産額、現預金も充実しています。
現在報道されているくらいの被害規模であれば、その補償で財務が揺らぐ可能性は非常に低く、破綻する可能性はかなり低いと言えます。

補償よりも、ブランドイメージが毀損することが今後の企業活動に与えるダメージのほうが心配です。今後の成長力にはマイナスの影響が考えられます。
ただ、破綻することまでは考えにくいと言えます。

■ 小林製薬の特筆すべき点


小林製薬の財務について、特筆すべきは無借金経営であるということです。
無借金経営で有名なところでは、キーエンス、しまむらあたりが挙げられますね。

企業財務に詳しくない方には意外かもしれませんが、上場企業で無借金経営は非常に珍しいのです。ほとんどの企業は何らかの形で金融機関から資金を借り入れています。

個人の場合にも言えますが、企業であればなおのこと借金は悪いことではありません。むしろ経営学的には奨励されていると言って良いでしょう。

資金繰りに借り入れが不可欠な企業もあれば、念のため余裕を持っておくために借り入れる企業も、インフレ率を考慮すると金利が低ければ借りるのが有利と考える企業もあります。
支払う金利は損金だから税効果があるという考えもありますね。

■ 借り入れOK派、NG派


借金OK派、NG派の争いは古くからあり根強いものです。
経営学的にはOK派が優位ですし、実戦派にはNG派が少なくありません。

国際的に有名な企業グループには、「世の中は長期的に見ればインフレだから、金は借りられるだけ借りておけ」を鉄則とするものもあります。
これは極端ですが、この企業はコモディティ商品の製造販売を主力事業としているので、この鉄則は正解なのですね。

コモディティの場合、シェアを高めることが至上命題ですから、そのためには常人の想像をはるかに超える巨額の投資が必要であり、畢竟巨額の資金調達も必要となるからです。

■ で、私の立場は


私も経営者ですが、どちらでもない中間派です。

まず無借金経営については、やりたくてもできません。
私の経営する会社は、決して財務状況が悪いわけではありません。むしろ良い方だと思います。
しかし、平常時について、借り入れ無しでも資金繰りが回りはするのですが、どうしても余裕がなくなる瞬間があったり、万一の場合が心配なのですね。
ということで、余裕を持たせるためにいくらかは金融機関から借り入れておきます。

また、なにか新しく事業を開始したりする際、資金需要が生じるときにも当然ですが借り入れます。

逆に巨大コモディティ企業のように「借りられるだけ借りておけ」方式も取れません。
弊社の信用力で最大いくらまで借り入れできるかはわかりませんが、不必要に多額の借り入れをしても、そのお金を投資する先がないと借り入れは無意味なのです。
投資する先がないとお金は眠らせておくだけになります。眠らせておくだけではお金は増えてはくれません。

結局、必然的に借金については極端な立場を取ることができず、中間派となるわけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?