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「しまむら」の財務から見る現在の強みと将来の不安

昨日、ricaさんのアダストリア企業分析記事を読みました。

そこで比較対象として挙げておられた「しまむら」について、ちょっとお手軽に見ていこうと思います。


■ 財務諸表の大きな特徴3つ


アパレルと一括りにされますが、しまむらと他社との大きな違いは3つあります。一目瞭然です。次のとおりです。

① 原価率が高い
② 有形固定資産が多い
③ 固定負債比率が低い

これらについて一つ一つ見ていきます。

■ 原価率が高い


まず損益計算書からわかるのは原価率が高いこと。
最近5年間の決算では、いずれの年も原価率65%以上でした。

アパレル他社、ファーストリテイリングは最近5年間で47~51%、アダストリアが44~46%であることと比較すると明確ですね。

これは、ファーストリテイリング(ユニクロ)とアダストリアが、企画、製造、販売までを垂直統合したSPAであるのに対し、しまむらが他社の開発する商品を仕入れて販売する仕入れ型であることが大きい。
要は企画などを外注している形なので、その分が原価に乗っているのですね。

営業利益をアダストリアと比較してみると、最近3年間でアダストリア0.4%
~4.7%に対して、しまむら7~8.6%です。原価率が高いからといって利益が比較的低いわけではありません。

■ 有形固定資産が多い


しまむらは有形固定資産比率が約30%です。アダストリア約15%、ファーストリテイリング約6%と比較すると明らかに高いですね。

これは文字通りしまむらは土地建物を所有することが比較的多く、アダストリアとファーストリテイリングはテナント出店することが比較的多いと考えられます。

土地を所有するということは、今後の人口減少に伴い地価が下落すると担保価値も下がって借入が大変になるというリスクも抱えます。が、後で見るようにしまむらは無借金経営なので大丈夫ですね。

■ 固定負債比率が低い


固定負債、つまり長期の借り入れの比率がしまむらは低い。比率で約2%、かつてはほぼゼロでした。ファーストリテイリングが約20%なので対照的です。(かといってファーストリテイリングの比率だって特に高いわけではありません)

これ、詳しく調べていませんが明らかに無借金経営がポリシーなんでしょうね。ここまで徹底しているということは。

無借金経営には古くから賛否両論で、いまだに決着しているとは言い難いです。

借金OK派の言い分は、「世の中は長期視点だと常にインフレだから金は借りられるだけ借りておけ」というもので、理論的に正しいです。ただし、事業の利益がしっかり上がることが条件ですが。

かたや無借金派の言い分もわかります。「どうこう理屈こねても金利を支払うようなキャッシュアウトは嫌だ」ってやつですね。マクロ的には借金OK派が正しいのですが、ミクロ的にはこちらも正しい。向いている会社には向いている。

まあスタイルの違いですから、どちらが正しいということではありません。

■ しまむらの今後


今後、しまむらに死角があるとすれば、国内事業が99%なので人口減少により、①売上が下がること、②現在多用しているパート従業員を集めにくくなるという二点に尽きるでしょう。
特に人的供給制約は、省人化経営に徹しているとはいってもつらいでしょうね。


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