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『新プロジェクトX』を見て~カメラ付き携帯より光通信を取り上げろ!~

はじめて『新プロジェクトX』という番組を見ました。
J-PHONEとシャープが組んで、世界初のカメラ付き携帯電話を開発するのが題材です。

『プロジェクトX』って、以前のシリーズもそうでしたが、ビジネスについて学ぶ番組として認識されることが多いと思うんですよね。
でも、それって勘違いです。

扱っているものがビジネス寄りなものが多いというだけで、内容というか作りはそうではありません。


■ ビジネスを学ぶケーススタディではない


『プロジェクトX』で語られるのは物語です。
誰が、いつ頃、どんなことを、どんなふうにやったのかが語られます。

どんな問題があったのかが語られることはあっても、なぜその問題が生じたかについての構造的な分析、問題が他でも生じる可能性についての考察や一般化はなされません。

解決法についても、主人公たちの行動が示されるだけで、視聴者ならどのような選択をするか考えさせられるわけではありません。

ビジネスを学ぶケーススタディではないのです。
あくまで物語なのですね。

■ これからの指針を示すものでもない


では物語から得られるものを抽象化したり一般化したりすることで、自分事として考えさせられるかといえば、そうでもない。
特にこれからの指針を示すものではないのですね。

昔こんな事があった、大変だった、でもやり遂げた、以上終わり。
あくまで物語として完結し、感動して終わりなんです。

■ おっさんのためのエンタメ番組


要するに『プロジェクトX』は、ビジネスを題材にしてカタルシスをてんこ盛りにした感動物語、エンタメなんです。

別にバカにしてはいません。そういうものだと言うだけです。

私は漫画好きですが、『プロジェクトX』で得られるカタルシス(感動と言っても良いのですが)は、漫画のジャンルで言えば「追放もの」、「悪役令嬢もの」から得られるそれと似ています。
抑圧や困難に押しつぶされそうになりながらも、終盤一気に解放される快感みたいな感じです。

そういう類のものと認識していれば良いのですが、そんな事を言うと「うるせえ!『プロジェクトX』はそんな安っぽいものじゃねえんだ!」と怒るおっさんが少なくないのは嫌ですね。

繰り返しますが、私は別に『プロジェクトX』をバカにしてはいません。
私、「そんな安っぽいもの」と言われるような漫画をいまだに山のように読んでいますから。

■ あの時代の携帯業界といえば


ところで番組を見ながら、あの時代の携帯業界を語るにはその切り口じゃないだろうという感覚で一杯でした。

忘れてはいけません。
あの時代、携帯電話普及に一役買ったのは光通信です。ブラックオブブラックカンパニー光通信。光通信という社名でわからなくても、あの時代に生きた人ならHIT SHOPを覚えているでしょう。
(光通信と言っても明確なイメージがわからない方は、「光通信 ブラックエピソード」あたりで検索してみてください。現在では想像できないようなエピソードがたくさん出てきます)

今では携帯ショップはキャリア別にお行儀よく別れていますが、あの時代の携帯ショップと言えばHIT SHOPに代表されるように、様々なキャリアを取り扱っていました。

道行く人に名刺交換を名目に声を掛ける販売員、「客捕まえるまで帰ってくるんじゃねえ」と脅された彼らは、あるいは法人セールスで無限テレアポを吐きそうになりながらかけまくっていた彼らは、私たち団塊ジュニア世代の象徴です。

「人は掃いて捨てるほど居る」「お前の代わりなんていくらでも居る」「働けるだけ幸せだと思え」…そう言われて使い捨てられた私たち団塊ジュニア世代を物語にするのに、あの時代の携帯業界はうってつけなんですがね。

まあ、カタルシスは皆無ではありますが。

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