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私、実は魔法使いでした

実は私、魔法を使うことが出来たんです。
何を言っているのか、おかしくなったのではないか、そんなふうに思われても仕方ないとは思います。

でも、本当なんです。
かつては今よりもずっと強力な魔法を使うことが出来たんです。
もう今ではあまり使えなくなってしまったのですが、今よりもずっと若い頃、20代の頃が魔法使いとしての最盛期でしたね。


■ どんな魔法を使えたのか


若い頃、よく理不尽なことを言われたり、人格のある人としてではなく奴隷のように、あるいは取り替え可能な部品のように扱われたことがよくありました。

当時の時代背景を説明ししましょう。

私の20代の頃は今とは全く違い、ハラスメント意識がかなり薄く、私たち団塊ジュニア世代は多く存在したのに景気が最悪でした。
そんなことから私たちは、「お前らの代わりなんていくらでも居る」、「働かせてもらえるだけありがたいと思え」と言われ続けました。

つまり、20代だった私に対して理不尽なことを行う人が多く居たのですね。
その人たちは私よりもかなり年上でした。

私はその人たちに魔法を使いました。
「私よりも先に居なくなれ」
そう呪文をかけたのです。

この魔法、百発百中だったと言っても過言ではありません。

■ どのように効くのか


色々な効き方をしました。

ある人はリストラという名の馘首となり、ある人は所属している会社が倒産し、ある人は異動していき、ある人は定年で去っていきました。
中には天に召された人もいます。

いずれにしても効きました。必ず効きました。

■ この魔法の特徴


特筆すべきは何と言ってもその威力の強さです。
必ず効くのですから文句はありません。

一方で気をつけなければならないこともあります。
すぐに効くことが少ないのです。いつ効くのかわかりません。ですから即効性には優れていませんでした。

こうした惜しい点はありますが、仕方ありません。長所があれば短所もあるのが世の常です。

■ この魔法、伝授します


この魔法、使えるのが私だけではもったいないので、伝授したいと思います。
ただし、この魔法の特徴から、伝授するのは若い人に限りますが。

この魔法のかけ方はただ一つ、「私よりも先に居なくなれ」と呪文を唱えるのです。
「死ね」という呪文はおすすめしません。死だけに限定したのではなかなか魔法はかかりにくいですし、何より魔法を使う人の魂が汚れてしまいます。
若い人は、自らそんなふうに汚れる必要はありません。

「私よりも先に居なくなれ」そう唱えるだけで十分です。

コツとしては、魔法をかけたら自分自身の健康に気をつけることです。
十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動、喫煙と過度な飲酒を避けること、こうしたことを守っていると魔法の効果を目にする可能性は高まります。

■ 年を取った魔法使いたちに


実はこの魔法、私以外にも使えた人たちがいました。
今はもう年を取ってしまった魔法使いたちに、仲間として言っておきたいことがあります。

若い頃、あなたが魔法をかけた相手にやられたようなことを、今の若い人にやろうとするのはやめましょう。

今の若い人の中にも魔法を使える人はいるそうです。
魔法をかけられたらお終いですからね。

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