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「子育て支援金は安いですよ」~嘘は言っていないが本当のことも言っていない~

今日はビジネススクールの恩師から教わったことについて書こうと思っていたのですが、変更します。
もう嫌になっちゃうなニュースに出会ったから、それについて書きます。

そのニュースとはこれ。

各方面から評判の悪い子育て支援金についてです。
この子育て支援金、「なんで健康保険料から取るんだ!おかしいだろ!」、「結婚や子育てにお金が必要な現役世代から取るってバカなの?」という感じで悪評高いのですが、私このニュースを見聞きする中で違和感を覚えたんですね。


■ 被保険者1人あたり?


ちょっとニュースから抜粋します。

こども家庭庁は9日、少子化対策の財源として医療保険料と合わせて徴収する「支援金」について所得別の負担額の試算を公表した。大企業や中小企業で働く人の年収が2028年度時点で600万円なら月額1000円、年収1000万円なら1650円となる。
(中略)
こども家庭庁は3月末、支援金を支払う被保険者1人あたりの平均の負担額の試算を出したが、所得を加味した試算は出していなかった。

日本経済新聞(2024年4月9日)「子育て支援金、年収600万円なら月1000円負担 政府試算」

なるほど、納得するか否かは別にして意味はわかります。
しかし引っかかるのです。
「被保険者1人あたり」…被保険者1人…

私は会社経営をしています。
社会保険料には毎月毎月痛い目にあっています。
なぜ痛い目にあっているのか?それは、社会保険料は労使折半だからです。

■ 社会保険料は労使折半


そう、未だに知らない人もいらっしゃるかもしれませんが、社会保険料は労使折半、つまり会社と社員が半分ずつ負担しているのです。

つまり、給与明細に記載されている社会保険料と同額を会社も支払っているのです。給与明細に記載の社会保険料の倍額が支払われています。

「会社が支払ってるから自分には関係ない」ではないのです。
会社が支払うお金=あなたが稼いだお金です。本来あなたがもらっても良いお金が社会保険料として収められているのです。

で、話を戻しますが、子育て支援金についてのニュースには「被保険者1人あたり」とあります。
知りたいのは、この金額は「労使折半する前」なのか「労使折半した後」なのかということです。

・労使折半する前→表示された金額の半分ずつを労使がそれぞれ支払う
 表示された金額が1,000円の場合、500円×2

・労使折半した後→表示された金額を労使がそれぞれ支払う
 表示された金額が1,000円の場合、1,000円×2

大きな違いです。

■ で、結局いくら取られるの?


調べてみました。

こども家庭庁によると、年収200万円で月額350円▽400万円で650円▽600万円で1千円▽800万円で1350円▽1千万で1650円になるという(いずれも労使折半後の金額)。

朝日新聞(2024年4月9日)「子育て支援金、年収600万円で月千円徴収 政府が年収別試算を発表」

つまり年収600万円の場合、会社が1,000円、社員も1,000円支払うということですね。最悪です。

前掲の日本経済新聞にこの表があります。

日本経済新聞(2024年4月9日)「子育て支援金、年収600万円なら月1000円負担 政府試算」

だいたい月額で表示するから、安いように見えるけどわかりにくい。経営者としては年度で決算するので、年単位でどの程度のインパクトか知りたいのです。

ということを踏まえて、労使合計で年間いくら支払うのかを算出して同じく表にしてみました。

子育て支援金負担額

年収600万円の社員さんが100名いらっしゃる会社の場合、新たに年間240万円負担が増えるというわけです。

こんな原資があるなら賃上げに使いたいですよ…

■ 嫌になっちゃうよ


だいたいですね、これまでにも「子ども・子育て拠出金」というものがありまして、これはなぜか会社のみが負担して支払ってきているのです。(2024年現在0.36%)

加えて今回の子育て支援金です。

そもそも社会保険料について言えば、かつて社会保険負担は、1980年代後半は10%を下回っていたわけです。しかも当時はボーナスからは差し引かれないという謎ルールでした。
それが現在は20%に迫ろうかという勢いです。
倍になっているのです。

もう嫌になっちゃいますよね。会社経営はどんどん無理ゲーになってきていますし、何よりこんなに引かれては社員が不憫です。
いい加減、マイナンバーと資産をひもづけて、社会保険を改革しないと社会全体が無理ゲーになっちゃいますよ。


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