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[m]otherhood

 スペインで制作されたドキュメンタリー『[m]otherhood』。原題は「母性」を意味し、日本では『出産しない女たち』 というタイトルで放送された。このドキュメンタリーには出産しないことを選んだ女性や母親になったことを後悔する女性が登場する。彼女たちは出産という観点では全く異なる選択をしているが、「母性神話」に抑圧されているという点で共通している。番組内では次のように言及される。「女性たちは社会から受けるプレッシャーを母性本能かのように認識する」と。「母性」とは女性に元からそなわっているものではなく、社会的に作り出されたもの、いわば幻想である。
 女性であることと母親であることがシームレスに結びつけられた社会で、母親にならない選択をする女性たちや、父親に比べて重い責任を負わされる母親役割に耐えかねた女性たちは、あたかも欠陥品であるかのように扱われてしまう。このような社会のあり方を温存し続けてよいものだろうか。出産しない女性たちを不可視化しないために、あるいは母親にばかり子育ての責任が押し付けられる状況を変えるために、幻想の産物である母性神話を解体する必要があるのではないだろうか。

仲山

〈参考文献〉
NHK ドキュランドへようこそ"「出産しない女たち」"(最終閲覧日2021年10月10日)