3分の1より高確率でわかる君とぼくのこと

噛めば噛むほど味が出る。
君はそういう人。

どこが？
なんて自覚のない君は言う。

どこも。
ぼくはそう言う。具体的な例なんて、ありすぎてわからない。

スルメみたいなこと？
君は不服そうに言う。

スルメっていうより、ガムかな。
ぼくは棚からガムをひとつ取る。

これ、3つ入っている内のひとつだけが酸っぱいんだって。

懐かしい。買おうよ。

いいよ。
お店から出ると、すぐに封を開けた。

ひとつはぼく、ひとつは君。残りひとつはふたりともセーフだったらじゃんけんしよう。
同時に口に入れる。

セーフ。
ぼくは両手を横に広げる。

すっぱ！
君は口をすぼませる。

歩きながらガムを噛みながら、家へと向かう。

ちょっと！くちゃくちゃ音立てないでよ。
君はぼくに言う。

ごめん、ごめん。
口を閉じてゆっくり噛む。

君は音を立てることなく、すっかり酸っぱくなくなったガムを噛む。
かばんからティッシュを取り出し、ガムを吐き出した。

はい。
ガムをくるめたティッシュをぼくに差し出す。

いらないよ。
のけぞるぼくを見て、君は笑う。

そういうところがガムみたい。
ぼくはそう言いながら、ティッシュを受け取った。

どういう意味？味がなくなるってこと？
君は不満気。

そういうわけじゃないよ。あとひとつ、じゃんけんする？
ぼくは残りひとつのガムを取り出す。

もう酸っぱくないの確定でしょ？

まあね。

…いいよ。
君は立ち止まり、腕まくりする。

そういうところがガムみたい。
そういうところが、好きなんだ。