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身をもってわかる

私が生まれて初めて買ったCDは原由子さんの『夢をアリガトウ』。サザンのメンバーでは原由子さんが好きだ。声変わりする前は地声で原さんの声真似ができたし、今でも主旋律より原さんのコーラスパートを耳で追ってしまう。なぜ原さんが好きか。本名と似てるから。というのは冗談として、鍵盤しか楽器が弾けないから。サザンの映像を見るときは図らずもついつい原さんに目がいってしまう。

原さんの演奏の特徴は何か。一丁目一番地に挙げられるのが、タッチの強さ。『奥歯を食いしばれ』や『My Foreplay Music』のようにどの鍵盤奏者でも強いタッチで弾くであろう曲はもちろん、『Oh!クラウディア』や『Ya Ya (あの時代ときを忘れない)』のようなしっとりとしたバラードであってもカーンカーンと結構な強さで弾く。

原さんのフレーズを弾いてみるとこれがまたなかなかの難易度である。メロディを邪魔せず、且つ引き立たせるカウンターはまさに天才の所業。あのフレーズをコーラスをしながらほぼノーミスで弾ききる原さんにライブの度に感服しているのはここだけのはなし。

サザンにハマったときから「原さんはどう弾いてるのか」ライブの映像を何度も繰り返して原さんの指使いを研究した。原さんのレベルには到底達しないが“原さんっぽく鍵盤を弾くこと”にかけては私は結構な自信がある(そんなこと誰も聞いてないか!?)。サザンのライブDVDで原さんだけを映すアングル、原さんの表情、手、引きの画の3点アングルを映すバージョンが出たら定価の3倍でも迷わず買ってしまうだろう。原由子さんを研究したい欲の強さは11歳のときから今もなお不変である。ライブで至近距離で原さんを撮るカメラマンの方に憧れたり嫉妬したりしたことも多々ある。

そしてやはり原さんといえば声。あるときは優しく包み込むように、あるときは色っぽく艶やかに。変幻自在な声色。個人的な前者のベストソングは『かいじゅうのうた』、後者は『イロイロのパー』。どんな声色でも唯一変わらないのは原さんが持つ“温かさ”。セクシーな歌を歌ってもその声からはどこか温かさを感じる。まさに原さんの声そのものが温かいということなのだろう。


といったように、原由子さんはサザンのキーボード、コーラスとしてはもちろん、ソロとしても唯一無二の魅力がある天才的なミュージシャンである。どうしてもサザン、桑田さんソロのサポート優先になってしまうのだとは思うけれど願わくば、久しぶりに原さんソロの新曲が聴きたい。「原由子というとてつもない才能を眠らせておくのは邦楽界、ひいては音楽業界全体の損失だ!」と言っても過言ではないと思うのは私だけだろうか。

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