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最高裁はAIに興味なし?

米国特許法において、AIは発明者となれるのか?という議論について以前記事を書かせていただきましたが、先週の4月23日付で米国連邦最高裁判所が本件のCAFC判決に対する上訴を棄却し、最高裁での審理の必要なしと判断しました。

元となるCAFC判決(通称DABUS事件。2022年8月5日)はこちら

CAFC判決は先例(precedential decision)とされているので、とりあえずはこのCAFC判決がリーディングケースとなるのだと思われます。

本判決におけるCAFCの理由付けは、以下の通りです。

① 米国特許法100条(f)は、「発明者」を「発明者とは、個人、又は共同発明において発明の主題の発明又は発見を共同でした個人らによる共同発明者」("the individual or, if a joint invention, individuals collectively who invented or discovered the subject matter of the invention.")と定義している。
② これまで米国連邦最高裁は、議会が異なる意図を有していると認められる場合でない限り(即ち、立法過程において特別な定義付けがされていない限り)、個人("individual")という文言は人間("human being")を指す用語であると判断してきた。
 特許法に関し、議会による特別な定義付けがされているという示唆はない。
 先例により、発明者は自然人("natural person")でなければならない(企業等は発明者とはなれない)ことが確立されている。

上記に対し、人工知能DABUSを開発したThaler博士が連邦最高裁に上訴していたのですが、最高裁としては審理をする必要がないとして当該上訴が棄却されたようです。

このあたり、国内外ではいろいろと議論がされています。先日、米国の知財弁護士団体(American Intellectual Property Lawyer Association:AIPLA)の代表団が来日し、講演等をしていったのですが、そのときのトピックにもこのAIに関するものが含まれていました。

実際、AIによる発明に対する寄与が自然人のそれと変わらないレベルにまで来たとき(あるいは、既にそのレベルに来ているのかも知れませんが)、少なくともAIを共同発明者に加えなければおかしいのでは、というのは当然の疑問のように思えます。
AIを駆使して発明を完成させたとして、その発明がAIを使わなければ完成させることはできなかった、というような場合に、AIを利用した人のみが発明者として権利を独占してよいのか?発明に対する相当の対価といえるのか、少々疑問が残ります。

一方で、AIに権利を与えることに意味があるのか?という疑問もありますし、AIが権利を濫用した場合、裁判所はそれを止められるのか?

AIの開発者に発明者としての地位を与える、という案もありそうですが、AIの用途は多岐にわたるため、当初開発者が想定していたのとは全く異なる形で発明に寄与する、ということも十分ありそうです。そうした場合にまでAI開発者が権利を得るというのは行き過ぎのように感じます。

今回、最高裁は審理を否定しましたが、AIの進化は凄いスピードで進んでいますし、まだまだ議論は尽きなそうです。

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