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渋谷0116

学校終わりに彼氏へ会いに。コツコツコツコツ、ヒールの暴力的な音に交じり、重々しい荷物をぶら下げカポカポ下駄を鳴らしながら歩く老人が目に止まった。不自由さが自分とリンクする。朝薬を飲み忘れてちゃんと息ができない。「はぁはぁはぁっ…」脂汗で額がびっしょり濡れている。老人にむかって歩いていたら階段から落ちた。誰も構ってなんかくれない。肝がヒヤッとした。目の青い男の人がこちらを嘲るように眺めてる。ごめんなさい。


電車が来るのを待つ間、強く打ったひざを撫でてみたら足が少し震えていた。何がそんなに怖いのか自分でもよく分からないが、まず喧騒が耐えられない。みんな私の事舐めてるのか知らないけど、一人一人横切る人全員距離が近すぎる。怖い。地下鉄のくぐもったアナウンスと淀んだ生ぬるい空気。なんだか不思議な臭いまでする。吐く予兆がベロの下からドバドバ溢れ出てきて、視界が歪む。全部だめ。
おばあちゃんに、会いたいなあ。小さい頃おばあちゃんと沢山お出かけをした。何歳まで手を引いて貰っていたかな。都会に出るとおばあちゃんと遊びに行ったことを思い出す。安心したい。彼氏に早く会いたい。年々できないことが増えていく。独りだと怖くて遠くに行けないから、逃げたくても人の手を借りないと何も出来ない。でも友達みんな忙しそうだし、私に構ってる暇とかないよね。逃げたい。生理で体が血なまぐさいのが不快だし、いくら洗っても昼下がりにはベタつく前髪も嫌、4キロも太っちゃった。馬鹿にしないでよ。私のこと。

いつもいつも心の中で誰かに助けを求めてる。人の気持ちが異常に読み取れない。考えられない。自分がどれだけグズでノロマで馬鹿でダメなのかだけはすごく詳しく感じて考えることが出来るのに、人のことになると頭にモヤがかかった見たく何も分からなくなる。こんなんじゃ大人になれないよ。もういい歳なのに。いい文章、いい絵、いい写真、何も出来ない。死にたくなる。

彼氏に会いに電車に揺られる。帰りの電車では甘く包み込んで欲しいの。


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