191223_プロナーゼMS処方単位数_滋賀県

厚労省にも筆の誤り?医薬品「プロナーゼMS」の処方量が異常に高い滋賀県

「プロナーゼMS」という医薬品があるようで。

効能又は効果
胃内視鏡検査における胃内粘液の溶解除去
用法及び用量
検査15〜30分前に、プロナーゼとして20,000単位を炭酸水素ナトリウム1gとともに約50〜80mLの水に溶かし、経口投与する。

胃の内視鏡検査をするときに使われるくすりみたいですね。

不可解に多い使用量

NDBオープンデータという病院のレセプト情報をまとめたデータが厚生労働省により公表されています。このデータと総務省の人口推計を組み合わせ、こちらの動画を作成しました。



名だたる高額医薬品が鎬を削る中、ある都道府県でだけプロナーゼMSという医薬品がトップをかっさらっていきます。

はい、ひょっこりはん(動画の1:46あたり)。

191223_プロナーゼMS処方単位数_滋賀県

なぜ滋賀県でだけプロナーゼMSが突出した高い処方総額を示すのか。2017年度の薬価が「132.3円」のこの薬。

滋賀県民はどれだけ胃の検査が好きなのか。

他の都道府県との比較

他の都道府県と比較してみましょう。動画では2017年のデータを使用していますが、こちらは2014年からの推移にて。都道府県別の人口で調整はしていません。

191223_プロナーゼMS処方単位数の推移

一応47都道府県分のデータが含まれているのですが、滋賀県の処方単位数が多すぎ、他は底を這うような一直線になりました。

2014年、2015年あたりは石川県もいい線行っていますが、2016年以降は滋賀県の独擅場。年々減らしてはいるものの、トップの座に君臨し続けています。

なお2017年の滋賀県は他の都道府県の平均の730倍、プロナーゼMSを処方していました。

ちなみに滋賀、石川を除くとこの通り。

191223_プロナーゼMS処方単位数の推移_除く

上から東京、大阪と順当に人口に比例するようです。

性・年齢層

プロナーゼMSをどんな人が使っているのか。性別、年齢階級別に示したのが下図。

191223_性年齢別_プロナーゼMS処方単位数

60代から80代、そして女性よりも男性の方が多いですね。ただし、(滋賀県のデータを反映して)年々減少し続けています。

異常値の理由

どうして滋賀県だけが特に高い処方量を示すのか。

推測ながら、この医薬品の名前に秘密がありそうです。

プロナーゼMS 20,000単位

「プロナーゼ」とは、タンパク質の分解酵素です。胃粘膜を形成するペプチドを分解します。

「MS」…は何の略かわかりませんでした。

そして、「20,000単位」。これが恐らくカギになるのでしょう。あるツイートにそれらしき記載がありました(ツイート主さんの所在地については知りません)。

紙レセプト時代、支払基金に「プロナーゼMS」は「プロナーゼMS2万単位1袋」ではなくて、「プロナーゼ2万単位」と書けと言われた。

言い分を受け入れて、わざわざ薬価を20000分の1にしていた。

今回それを正常の状態に戻すけれど、ちょっとやらかして・・・。

滋賀県の、特定の医療機関がこの「20,000単位」の扱いを違えているのではないか。

そんな風に異常な処方量の理由が推察されます。

NDBオープンデータに気を付けて!

公的な統計データを利用して何か価値ある情報を得ようとする場合、取得したデータの内容は信頼できるものと仮定しがちです。

それでも、恐らくは誤りが含まれており、訂正も難しいものです。

今回示した「プロナーゼMS」×「滋賀県」が誤りかどうか定かではありません。NDBオープンデータはレセプト情報を基に作成されているので、個々の医療機関の入力値にまで遡らなければ誤りであるか否か分からないと思われます。

こうしたデータをどう扱うか。訂正にコストをかけるのか。ただただ無視してしまうのか。ビッグデータ時代に何か示唆を与えるかもしれません。




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