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アナーキー・イン・ザ・DK

今日の話は、母や祖母への感謝と懺悔を込めて書く。

これから私は、自分の事を棚に上げて、散々文句を書くかもしれないけど、私も人のこと言える立場ではないのだ。

結婚してから思ったんだけど、主婦はやることが多い。
主婦と名乗るのも申し訳ないくらい大したことはしてないけれど、それでも、共働き兼業主婦の端くれとして言わせて欲しい。
「なんで、私ばっかり家事やってんの?」

一度それで、夫にキレたことがある。
数年前、私が可愛い可愛い新妻だった頃の話だ。

当時も今も、私たち夫婦は二人ともフルタイムで働いている。
私の方が帰宅時間が早いのもあり、料理、洗濯、皿洗い、風呂洗い、家事と名の付きそうなものはほとんど私がやっていた。

お給料は夫の方がたくさん貰っているし、仕事が忙しいこともわかっていた。
疲れて帰ってくるのに、グチグチ小言をいうのも悪いな、という健気な心も持っていた。

私の実家も、夫の実家も、母や義母が座る間もなく動いていたから、まあそういうもんかな、と思っていた部分もある。

だけど、家事に慣れていないこともあり、中々自分の時間がとれないことにストレスも溜まっていた。
そして、ある日、堪忍袋の緒が切れた。

その日は夫の帰りが早く、二人並んで夕ご飯を食べていた。
食事も終わり、一休みして、さて片付けるかと立ち上がる。
自分の食器をシンクに下げ、夫にも「お皿洗うから持ってきて」と声をかけた。

夫は、ああ、だか、うんだか生返事をして、スマホから目を離さない。
ちょっぴり腹が立ったが、先に自分の分を洗うとする。
だけど、皿を洗い終わる頃になっても、夫は一向に動かない。

怒りのマグマが、腹の底で沸騰している。
それを、天使のぽん子ちゃんが必死に宥めている。

夫も仕事を終えて、やっと一息ついたんだし。
リラックスする時間も必要だよ。

わかる、わかるよ。
でもさ、私、朝早起きして弁当作って、帰ってすぐ夕飯作って、皿洗って、風呂入れて、それで一日終わるんだけど。

皿を運ぶくらいやってくれても良くない?
家事は妻の仕事って、決まってるわけじゃないんだからさ。

だいたいさあ、と、結婚してからちょっとどうなんだと思っていた事が、芋づる式に思い出される。

夫の実家に行っても、家事は義母をはじめとした女性陣がほとんどやっていた。
私たちが、皿を洗ったり、片付けたりしてる横で、夫たちはのんびりテレビみたり、スマホをいじったりしている。

ちょっとは、手伝おうとか思わないわけ?

一度火が着いたら、私の怒りはどんどん膨れ上がっていく。だけど、喧嘩はできれば避けたい。

すんでの所で怒りを抑え、私は夫にもう一度声をかけた。
しかし、彼の返事は「あとでやるから置いといて」

後でやる、の言葉を信じて、翌朝テーブルに置いたままの汚れた皿を洗ったことが、結婚してから何度もあった。
もう喧嘩になってもいいや、と思った。

「あのさあ、私ずっと思ってたんだけど」
私の様子が変わったのに気づいたのか、夫がスマホから目を離してこちらを見る。

結婚してから、朝から晩まで家の仕事で自分の時間がほとんどない事、夫の実家に行っても、私ばっかり手伝っている事に対する不満などが、次から次へと溢れてきた。
多分、知らない間に相当不満とストレスが溜まっていたんだろう。

結局、そのあとどうなったかはあまり覚えていない。
しかし、それから食洗機が我が家に導入されたので、キレた私が相当恐ろしかったのかもしれない。

念のためフォローを入れておくと、私は結婚してから今まで、夫にも、夫の両親にも、嫁に来たんだから、とか、女なんだから、みたいな面倒なことを言われたことは一度もない。

夫も、結婚してから数年経ち、細かいところの掃除や、お皿洗いなど、一緒に家事をやってくれる事が増えた。

同僚のご主人は、お仕事が休みの日にご飯を作ってくれると言っていたし、別の店舗で育休をとった男性社員もいる。

だけど、やっぱりなんとなく、家の事や子供の事、夫の親戚付き合いなど、女の人って仕事以外にやらなければならない事が多い気がする。

お父さんが子供を預かっていると、偉いねって言われるけど、お母さんは言われるのかな。

「ご主人が休みの日にご飯作ってくれていいな」って言うけど、「奥さん毎日料理作ってくれて羨ましいよ」は、あまりきかない気がする。

そういうもんだと思う心と、ちょっと不平等だよ、と思う心が私の中に同居している。

祖母や、母、義母たちが台所に立つ姿が浮かぶ。

毎日、毎日、献立を考え、野菜を刻んで、皿を洗う後ろ姿。
身体が弱かった私を看病してくれた母の姿。
行事の度に、ご馳走を作ってくれた、祖母や義理の母の姿。

きっと、面倒だと思ったことも、休みたいと思ったことも山ほどあっただろう。
だけど、私は、祖母や母が文句を言う姿を見たことがない。

もっと早く、気がついていればよかった。
そうしたら、家事も積極的に手伝えたし、感謝の気持ちもしっかり伝えることができたはずだ。

私には、スマホをいじっていた夫に文句を言う資格はないのだ。

知り合いの夫婦は、奥様の方が仕事でバリバリ稼いで、ご主人の方は家事などをメインでやっているらしい。
どちらも、その方が性に合っているといっていた。

これから、男だから、女だからとかじゃなくて、そういう風に、自分の向き不向きとかで選べるようになっていけばいいなと思う。

そこまでいかなくとも、家のことは家族で協力してやっていくのが当たり前になっていけばいい。

遅ればせながら知った、生活を回すことの大変さと、それを長年続けている祖母や母への尊敬の気持ちから、私はそんな風に思っている。

今日の一曲
アナーキーインザ1K/ハヌマーン

19日目
あまり賛成できない常識








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