「二酸化炭素は人類にとっての恵みである」


2019年12月17日 インタヴュー 
ウルリッヒ・クッチェラ「二酸化炭素は人類にとっての恵みである」。

環境保護はイエスだ——しかし、ヒステリックな生徒たちやパニックに陥った政治やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の非科学的な恐怖のシナリオぬきで、である。進化生物学者のウルリッヒ・クッチェラは、このように要求している。というのも、ほとんどの「気候保護論者」は、二酸化炭素の意味すらも理解していないからである。

——クッチェラ教授、研究によれば97%ないし99%の科学者たちが、気候変動は人間によって生み出されているということで一致してしているようです。なぜあなたはそれに対して反対の立場を取っているのですか。

ウルリッヒ・クッチェラ(以下K): それはただの神話に過ぎません。97%という数字は、2013年にオーストラリアの認知科学者のJohn Cookによって、99%という数字は、2016年にアメリカの地質学者のJames Powellによって世に出されました。しかしながら証明されているのは、この命題がもはや維持不可能なものであるというものであり、そのことについては、Davids R. Legatesとその協力者がScience et Eduvation, Band 24, 2015において、そしてAndrew Skuceが2016年4月16日のwww.skepticalscience.comにおいて立証しています。

——あなたの主たる反論はどのようなものなのでしょうか。

K: CookとPowellは、恣意的な数の気候に関する出版物を疑わしい基準によって活用しており、しかもその問題設定に明確に応えられていない研究すらも肯定的に評価しています。せいぜいのところ、これらの分析から何か結論が引き出しうるとすれば、1900年以来、地球規模で0.8度というわずかな地表の温暖化が測定され、そこに人間の影響がある公算が大きいということだけです。(小氷河期の終焉以来)大気の温度が上昇しているという主張については、私は同意しますが。

——あなたは9月にベルリンで開かれた、ある専門家の学会において、European Climate Declarationに署名をしました。それによれば、気候-非常事態などというのは存在しないといいます。なぜでしょうか。

K: 学部の同僚から、そうするように要求されたのです。すべての点について同意をしているわけではありませんが、にもかかわらず重要だと思われるのは、望むらくは政治的な中立な専門家による解明の主導が生まれることです。私は自分のことを「気候変動現実論者」と呼んでいますが、その立場は二つの極端な立場を拒否するのです。すなわち一方においては、近いうちにおける「温暖化による死」のような虚構を預言してみたり、ある種の宗教的カルトを営んでいる「気候警鐘論者」と、他方においては、いわゆるいかなる環境問題も見ようとしない「気候否定論者」です。

——生物学者として、あなたにはどの程度まで気候という主題そのものについて扱う資格があるのでしょうか。少なくとも物理学者ではなければならないのでしょうか。

K: 私は生物と化学を(音楽学という副専攻と一緒に)研究しましたし、その後にアメリカで細胞の成長に関する生物物理学(と光合成の研究)で資格を得ました。地上領域の気候が主として植物によって規定されていて、また植物生理学が物理学-科学を基礎とするものであるからには、十分に私には資格がある気がしますが。

——『ジェンダー・パラドックス』という本であなたが強調していたので、定義というものがいかに重要であるかということです。あなたは気候というものをどう定義するのですか

K: 手短にいうならば、「気候」というのは天気についての長期的統計を意味します——過去三十年閒に関するですが。その際には、本質となる気候の諸要素が把握されて、抽象的な統計的規模が表現されています。だからこそ、ひとは気候を「否定する」ことも、「救済する」ことも、「保護する」こともできないのです。それは初めから変動しているのであって、いうなれば統計上の長期的な規模における恒常的な変化というのは——地球の自転や進化のような——事実なのです。

——二酸化炭素が、だいたいの場合には議論において、有害物質、ある種の気候破壊者として描写されます。あなたは自らの教科書『植物生理学』において、それはあらゆる植物にとっての基礎的な栄養素であるということを強調しています——それは矛盾なのでしょうか。

K: 残念ながらドイツにおいては偽科学的な植物的秘教信仰が蔓延しているので——『樹木の秘められた生命』のようなベストセラーのことを考えてみてください——わたしはそこで、科学的な思考の仕方、仕事のやり方についっ説明しているのです。そして自分の本で描写しているように、植物というのは、「いわば天然の太陽光発電所にして温室効果ガス削減装置」なのです。だからこそ、いわゆる緑の植物というのが、あらゆる理性的な気候についての論争の中心にはいつもいるのです。植物が二酸化炭素を基礎的な栄養素として必要とするからには、この微量ガスなしでは、地球上にいかなる生物も存在しえないのです。

——吸収した二酸化炭素によって植物が酸素を生み出すことは、誰でも学校で習います。なぜしかし、大半のメディアや専門家や政治家の論争においては、このことは無視されるのでしょうか?

K: ドイツの生物学者であるJulius Sachs——彼は1832年から1897年まで生きたのですが、植物生理学の祖として世界中で知られています。1865年に彼が証明したのは、緑の植物は、光の下で二酸化炭素を供給されるときに、私たちの生命を維持する大気中の酸素を発散することができるということです。だからこそ、植物生理学という学問分野は中心的な意味をもつのです、さらには、二酸化炭素は人類にとって恵みなのです。だいたい1850年以来、空気中の二酸化炭素の容積比率は、当時の0.028から今日における0.041に上昇しています。このことはグローバルな光合成の活発化につながったのです——地球は人間によってより緑になったともいえます。

——なぜそのことについて、メディアにおいてほとんど耳にすることがないのでしょう。

K: それは気候論争が政治的なものだからです。その論争は、IPCC、気候変動に関する政府間パネル——Weltklimaratとも呼ばれますが——によって支配されていて、残念ながらそこには科学者だけではなく、政治家やメディアの人々も活動しています。IPCCの「ドグマ」に反するような科学的認識は、巧妙なやり方で制圧されてしまうのです。スタンフォード大学の研究員として、私はあなたに、その点で驚くべき事実をお伝えすることができます。

——ぜひお願いします。

K: ただ、このことは少し話の逸脱で、別のインタヴューをするべきテーマでしょう。そのことについては、補充移民と気候ヒステリーについての2020年の私の新しい本で、もっと読むことができると思います。

議論が一面的に行われ過ぎている

——では、そもそも温室効果ガスというのは何であり、どうして二酸化炭素だけが、この論争において非常に目立っているのでしょうか。

K: それもまた『植物生理学』で説明しています。水蒸気、二酸化炭素、メタン、オゾンは、四つの重要な気体の大気中の要素であり、自然に生じる温室ガス効果の原因になっています。そして、二酸化炭素が存在しなければ、赤外線光線の吸収も起こらない——赤外線-ガス分析装置によって光合成率を厳密に数量化することも不可能である。また二酸化炭素値が——すでに説明したように、化石燃料の燃焼によって影響を受けて——世界規模で上昇しているので、それを受けて四つの温室効果ガスのうちの一つとして、二酸化炭素が、正しくも議論の中心にあるのです。

ついでにいうと、私も二酸化炭素の放出量の削減の制限が行われるべきだとは考えています。しかしながら、議論はあまりに一面的に行われているのです。いま計画されているようなナンセンスな二酸化炭素税など、実際には国家へのある種の新しい「食品-特別税」なのです。

——どのような要素や所見が、その議論においては適切に配慮されていないのでしょうか。

K:環境のうち人間によって大気中に生み出される——つまりは人為的な由来の——二酸化炭素の意味について評価するためには、いわゆる地球上における炭素の循環についてよく知らなければなりません。それを厳密に知りたいすべての人に対して、私は『植物生理学』において、その実際の水準に対する中心的な知見を、図やグラフによって頑張って描きましたし、そのために私は数えきれないほどの専門的文献を有効に活用しました。

簡単に言いましょう。一つひとつの二酸化炭素分子は、ある酵素(緑色植物亜界の鍵となる光合成の酵素、すなわちリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ、略称: ルビスコ)によって、植物のバイオマスへと送りこまれるのです。この過程の「動因となるエネルギー」を運んでくるのが光です。植物でさらに行われるプロセスは、(ミトコンドリアの)細胞呼吸と(微生物の)地中呼吸です。この二つ呼吸の過程によって、植物のうちに蓄積された二酸化炭素の大部分は、空気のうちに循環していくのです。

どうかパニックとヒステリーなしで

——まず植物は——ルビスコという酵素によって——二酸化炭素を吸収し、その後に「息を吐く」、つまりは細胞呼吸と地中呼吸によって、微量ガスを排出するということでしょうか。

K: そうです、そしてこの自然的な炭素の循環が、付加的な人間の作為による二酸化炭素によって、次のように変容させられています。つまり、いまではだいたい私たちが大気中に生み出す二酸化炭素の三分の一が植物によって吸収されていて、それがそれらの成長を促進しているのです。結論として生じているのが、より多くの収穫作物までも含めた人間による地球の緑化であり、世界規模でそれによって農業は利益を得ているのですが、とりわけ私たちよりも高い程度において農作物に依存している貧困な国がそうなのです。

——では問題はどこにあるのでしょう。

K: 残念ながら、光によっておこなわれる地球全体の光合成では、「余剰の人間の作為による」二酸化炭素を結合するには十分ではありません。だからこそ、太陽によって営まれる二酸化炭素を仲介にしたエネルギーの獲得のプロセスを技術的に適用するという目的をもって、光合成をより深く研究することがとても重要なのです。

——にもかかわらず私たちは、IPCCの科学者たちの気候モデルや予測に対して、異議を唱えています。なぜあなたはそれを全く評価しないのですか。

K: 幸いにも、こういった未来予測は、多くの場合において、虚偽か誇張による恐怖のシナリオであることが、証明されています。というのも「気候」——つまりは最近三十年における天気についての統計的値——は、あまりに数多くの要素に依存しており、それが理由で長期的な診断には大きな誤差率が付きまとうからです。ただ実際に、『植物生理学』で詳述したように、人工的な植物の増殖による二酸化炭素の肥沃化——これはまた否定的な長期的帰結をともなっていますが——を減少させるために、植林と結びつけながら、あらゆる植物の殲滅をやめることは望ましいことなのです。

しかしながら願わしいのは、たとえばWilliam J. Rippleなど、数多くの学者たちが生物学の専門誌で広めてしまったような「気候非常事態」というようなパニックやヒステリーをともなわないことです。不安に駆られた同僚たちは、1980年からの測定結果に縦に取っていますが、しかしながら1800年以来の巨大な揺れ動きを抹消することによって、現実についての誤ったイメージが生まれているのです。あともう一つ重要な点は、植物というのは、幹細胞をもっていて、それゆえに完全に抹消されることなどありえないということです。植物には膨大な再生産能力が備わっており、新芽を形成することで草木のない領域ですらも緑化するのです。

ドイツだけでは何も変えることはできません

——では、あなたの意見によれば、„Fridays for Future‟運動はどう評価されるのでしょうか。

K: 私も自分が若いころには自然保護のために活動していました——池沼の造成など——から、基本的には、この運動を肯定的に評価しています。しかし私が恐れているのは、その活動家たちの97%が「気候」の概念を定義もできないし、炭素循環ないしルビスコ酵素の機能のことを理解していないこと、それゆえに純粋に政治的に行動していることです。非合理的な気候-カルトが盛り上がっていますから、私は„Fridays for Plant Physiology‟ つまりは「植物生理学のための金曜日」運動を支持したいと思います。

——ドイツは「気候を救う」ためになにかできるのでしょうか。

K: ドイツはわずか世界全体における二酸化炭素放出量の2.2%の部分、つまりは自然における気候変動の、おそらくは人間の手による部分のほとんどゼロに近い部分しか変えることはできません。それに対して、人工的な光合成システムの構築——それが私の望んでいる「科学的な立場」に合致するものです!日本や中国から合法的にドイツに移住してきた高度な資格をもった生物学者たちとの共同研究もよろこんでしたいところです。

——ジェンダー・メインストリーミングに対する批判によって、あなたは広く公衆に知られることになりました。なぜあなたはいま気候というテーマを取り扱うのですか。

K: 私の書物『植物生理学』は、ドイツ生物学界のスーパースターであるユリウス・ザックスの業績に負っています。そして、そこでご説明したように、ザックスは性生物学を創建しただけではなく、光合成研究の開拓者でもあったのです。だからこそ、私のスタンフォード/米国での研究作業に依拠しながら、両者の主題を包括的な作品のうちで、描写したのです。植物というのは、葉からの発水によって、生物界における水の流通の70%を規定しているのです——キーワードは水蒸気と雲の発生です。

植物は地球において中心をなす「気候の調整役」です。ひとは生物学を全体として概観するとともに、お互いに議論をし、また目の前にある問題について理性的な解決をつくり上げていくために、その学問によって連関する認識のネットワークが築かれることを認めなければならないのです。

https://jungefreiheit.de/debatte/interview/2019/co2-ist-ein-segen-fuer-die-menschheit/


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