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複素数と虚数単位i

複素数と虚数単位iの登場

高校1年では中学校で学習した2次方程式をもう一度学習しさらに発展的に利用します
しかし、2次方程式 $${ax^2+bx+c=0}$$ の
解の公式 $${\displaystyle x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}}$$ において
根号の中の式 $${b^2-4ac}$$ が負の場合は『解なし』としました

ところが、高校2年になると急に根号の中の式が負でもOKにしたのです
つまり $${i=\sqrt{-1}}$$ を単位として $${\sqrt{-4}=2i,\ \sqrt{-5}=\sqrt{5}i}$$ のように表すことにして、これも数の仲間にしたのです
虚数解(複素数)の誕生です

次に登場するのは高校3年
複素数平面でです。先生によっては発展的に複素数とベクトルとの関係や、
複素数 $${\cos \theta +i\sin \theta}$$ をかけることによる原点中心の回転移動と
回転行列 $${\begin{pmatrix} \cos \theta & -\sin \theta \\ \sin \theta & \cos \theta \end{pmatrix}}$$ と列ベクトルの積が同等なものであることをお話しされることもあるかもしれません

それで高校2年のときに疑問に思いませんでしたか
『なし』にしていたものを急に『あり』にするとか、その利用方法とか……説明ほとんどなかったですよね
(まあベクトルの内積とか対数とかもなぜ?って思った方もいると思います)

それで調べてみると3次方程式の解を求めるときにどうしても複素数が登場してしまうことがあるという事実にぶち当たりました
これなら複素数を認めざるをえないというわけです

3次方程式を解く

例として3次方程式 $${x^3-15x-4=0}$$ の解を求めましょう

■高校2年でならう因数定理を用いた解法

$${P(x)=x^3-15x-4}$$ とおくと
$${P(4)=0}$$ より $${P(x)}$$ は $${x-4}$$ を因数にもちます
よって$${P(x)=(x-4)(x^2+4x+1)}$$ となり
3次方程式$${P(x)=0}$$ の解は$${x=4,\ -2 \pm \sqrt{3}}$$ となります

■3次方程式の解の公式を得る流れに沿った解法

まず準備として高校2年または高校1年の発展で習う因数分解について
$${\begin{matrix*}[l]{} &{}& a^3+b^3+c^3-3abc \\ {} &=& (a+b)^3-3ab(a+b)+c^3-3abc \\ {} &=& (a+b)^3+c^3-3ab(a+b)-3abc \\ {} &=& \{ (a+b)+c \} \{ (a+b)^2-(a+b)c+c^2 \}-3ab(a+b+c) \\ {} &=& (a+b+c)(a^2+b^2+c^2+2ab-bc-ca)-3ab(a+b+c) \\ {} &=& (a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca) \end{matrix*}}$$
さらに $${a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca}$$ を因数分解するために
$${a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca=0}$$ を $${a}$$ について解くと
$${a^2-(b+c)a+b^2-bc+c^2=0}$$ より
$${ \begin{matrix*}[l] {a} &=& \displaystyle \frac{(b+c) \pm \sqrt{(b+c)^2-4(b^2-bc+c^2)}}{2} \\{}&{}&{}\\ {} &=& \displaystyle \frac{(b+c) \pm \sqrt{-3b^2+6bc-3c^2}}{2} \\{}&{}&{}\\ {} &=& \displaystyle\frac{(b+c) \pm \sqrt{3}i |b-c|}{2} \\{}&{}&{}\\ {} &=& \displaystyle\frac{(1+\sqrt{3}i)b}{2}+\frac{(1-\sqrt{3}i)c}{2}, \displaystyle\frac{(1-\sqrt{3}i)b}{2}+\frac{(1+\sqrt{3}i)c}{2}  \\{}&{}&{}\\ {} &=& \displaystyle-\frac{(-1-\sqrt{3}i)b}{2}-\frac{(-1+\sqrt{3}i)c}{2}, \displaystyle-\frac{(-1+\sqrt{3}i)b}{2}-\frac{(-1-\sqrt{3}i)c}{2} \end{matrix*}}$$

ここで、$${\displaystyle\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}}$$ と $${\displaystyle\frac{-1-\sqrt{3}i}{2}}$$ は
$${a^2+a+1=0}$$ の解ですから $${\omega}$$ と $${\omega^2}$$(注:どちらがどちらかは決まっていない)とおくことができ、
$${a=-\omega b -\omega^2 c,\ -\omega^2 b -\omega c}$$
となるので元の式は次のように因数分解されます
$${a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a+\omega b+\omega^2 c)(a+\omega^2 b+\omega c)}$$

さてこの式で $${a=x,\ b=-u,\ c=-v}$$ とおくと、左辺=0 の方程式は
$${\begin{matrix*}[l]a^3+b^3+c^3-3abc  &=& x^3-u^3-v^3+3xuv &{}&{} \\ {} &=& x^3-3uvx-(u^3+v^3) &=& 0 \\ \end{matrix*}}$$
となり、その解は右辺より
$${x=u+v,\ \omega u+\omega^2 v,\ \omega^2 u+\omega v}$$ となります

実際に解いてみる

では実際に3次方程式 $${x^3-15x-4=0}$$を解いてみます
係数を比較して$${\left\{\begin{array}{ccc}-3uv &=&-15 \\ u^3+v^3&=&4\end{array}\right.}$$
$${\therefore\ u^3 v^3=125,\ u^3 +v^3 =4}$$
$${u^3}$$ と $${v^3}$$ を解とする$${X}$$に関する2次方程式は
$${X^2-4X+125=0}$$
$${\therefore\ X=2 \pm 11i}$$
これが $${u^3}$$ と $${v^3}$$ になるわけですから
$${u=\sqrt[3]{2+11i},\ v=\sqrt[3]{2-11i}}$$
したがって解の公式を得る流れに沿った方法で解くと
$${\begin{matrix*}[l]{x} &=& \sqrt[3]{2+11i}+\sqrt[3]{2-11i}\ ,  \\ {} &{}& \sqrt[3]{2+11i}\ \omega +\sqrt[3]{2-11i}\ \omega^2\ ,  \\ {} &{}&\sqrt[3]{2+11i}\ \omega^2+\sqrt[3]{2-11i}\ \omega  \end{matrix*}}$$

これらが $${x=4,\ -2 \pm \sqrt{3}}$$ になるわけですから、複素数を認めざるを得ません
また、解の公式が複雑すぎるので高校まででは基本的に因数定理を用いた因数分解による解法のみを取り扱っているのです

【参考】$${\sqrt[3]{2+11i}=2+i}$$ なので、代入して計算すると解は一致します

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