【パーマカルチャーデザイナー vol.23】Yukiko Nakagiri
これはパーマカルチャーデザインコース(以下、PDC)を修了したパーマカルチャーデザイナーたちのリレーコラムです。
※パーマカルチャーとは
"Permaculture is a dance with nature, in which nature leads."
パーマカルチャーとは自然に導かれる自然とのダンスのようなもの。
Bill Mollison
ビル・モリソン
#23 Yukiko Nakagiri
#22 立山凪 からのバトンは #23 中桐由起子 へ。
穏やかな気配をまとっているゆきちゃん。
古民家を改築してゲストハウス運営までに一歩一歩を踏み進めてきた努力は並大抵のものではなかったと思うのだけど、さらりと話す彼女のあっけらかんとした笑顔に信念を貫く美しさを感じています。
Q1.あなたについておしえてください
岐阜県下呂市の農村に住んで8年目。現在は、古民家をリノベーションした「ソラノイエ 農村滞在型の宿」を運営中。
20代の頃は東京にいて経済活動のどまんなかで日々を過ごしていたけれど もっと違う生き方があるのかもしれない、と考えるきっかけになったのは北海道にWWOOF(農場で「労働力」を提供する代わりに「食事・宿泊場所」「知識・経験」を提供してもらうシステム ) に行ったとき(このとき初めてパーマカルチャーを知る)と、2011年に震災を東京駅周辺で経験した時に感じた違和感。
その違和感が大きくなって、きちんと人生を模索したいと会社員をやめて渡豪。そこでPDCを受講してその概念や様々な活動に感動した。
その後ニュージーランドでパーマカルチャーの学びを深めるためWWOOFerとしてノマドな一年を送った。この期間中に出会った人、人の手がかかっていない美しい自然、コミュニティビレッジ、ただありのままを生きる時間、あるものを活用する暮らし、そのすべてが今の私の原点になっている。
模索期間は終了し、帰国。
私の好奇心の矛先は、旅をしてたくさんのことを吸収したいというものから、1つのところにじっくり居て季節と関わり、作物の成長とともに営む暮らしに興味が移っていった。
田舎に貢献できる仕事を探して2014年に地域おこし協力隊という仕事に就き、移住。地域の人たちと一緒に古民家を改修し、現在は宿業・まちづくりなどをしている。
2019年、PAWAのPDCを受講。
Q2.パーマカルチャー デザインコースを通して
このコースを通して、私にとって大きな収穫は3つ。
〈1つ目〉
2度PDCを受講している。
1度目(2013年オーストラリアにて)のときははまさか自分がフィールドを持つということは想像すらしていない時だった。
2度目の2019年(日本・PAWA・DOJO・Pamimomi)の時はフィールドを持ち自分なりにパーマカルチャーを取り入れながら暮らしを創っている最中で、技術的な部分や仕組みやデザインについて自分のフィールドに落とし込みながら受講することができたことが大きな収穫だった。
〈2つ目〉
「仲間」・「つながり」。
田舎暮らしの中で、パーマカルチャーという言葉の認知度はとても低い。
言葉だけでなく、概念や考え方も特殊に思われてしまいがち。
そんななかで、自分の創りたい世界観がボヤけてしまったり孤独を感じたりしていた。だからこのPDCに参加したことで仲間に出会い、それぞれの人生に共感したり実践している人に学べて、自分のやっていこうとしていることに自信がもてた。
〈3つ目〉
フィールドをつくる・場所をつくるというのは、ハードとしてどうデザインするのかだけでなく、そこに関わる人と一緒にどうつくっていくかが重要だとは感じていながらも自分のなかにこれという基盤がなかった。
PDCでは対話やコミュニケーションの場としての時間があって、そこからの学びは大きかった。毎日、自分自身の声を聞く時間、仲間たちそれぞれの今の気持ちをただ聞くという時間、ジャッジせずジャッジされずという安心感、協働生活の中にある対話、1人の時間、それがPDCの日々の中にあった。みんなが何かしらニーズを持って生きていて、それを受け止めることができる空間づくりは最強だなと思ったし、一人一人が個性ある人間だと自然と感じることができた。今でも、人間関係の悩みや自分と誰かの対話の中でうまくいかないこともあるけれど、なんかここの感覚に戻ってこれれば大丈夫、という支えになっている。
Q3.あなたにとってパーマカルチャー って
「創造することへのエール」かな。
いつだったか、人は、考えたり創造できる動物だということを聞いて、当たり前のことだけどとても感動した。そうやって文明って発展してきたんだよなぁと、すごいね、人類!って改めて思う。
パーマカルチャーを知る前は、創造力っていうのは芸術や発明とかその世界のものだと思っていたけれど、パーマカルチャーを知ってから、日々の暮らしそのものも創造の賜物で、どれだけ創造することによって変わるのか、わくわくするのかということを知った。
暮らすこと、生きること、地球のこと、もっと小さな微生物の世界も、人間関係も、仕組みがあってパターンがあって多様性があって、関わり合って成り立っていて、そういったものを紐解いていきながら、「じゃあきみはどうする?」「どんな社会がいい?」って問いや選択が目の前に来た時に、自分にとっての最善を考えて創造していくことに未来があるし、それをパーマカルチャーは教えてくれた。私にとってはそれがパーマカルチャーかな。わくわくできる。困ったらパーマカルチャーの原則に戻ったらいい。
創造することができるってことは自由でミラクル。すべてのひとが持ってる。でも創造しないで生きることも、今の便利な社会ではできちゃう。
だからこそ、わたしはいつでもこのミラクルな力を楽しんで使っていきたい。
Q4.PDC卒業生の中で次にバトンをつなぎたい人
FOX。
彼は、PDC一期生だけれど、実践コースに参加していて出会った。
勝手にだけど、彼の活動は人やコミュニティ、社会、自然、それぞれを育てることやShareすることへのパッションがあって、飾らないFOXの話に感動していた。
周りに着実にコミュニティをつくっていっていて、いろんな話を聞いてみたいので、どんな内容のコラムになるのかとても楽しみ。
#23 中桐由起子 からのバトンは #24 ウエノチシンへ。
お楽しみに!
2022/2/19 雨水