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「とりあえず資金調達」を避けるための4つのポイント

「腹が減っては戦(いくさ)はできぬ」と言いますが、経営者にとっては「お金が減っては戦(ビジネス)はできぬ」です。

しかし、「お金に色はない」とばかりに、金融機関や投資家から言われたとおりに資金を調達してしまうと、後で後悔することになりかねません。

今回は、そんな「とりあえず資金調達」を避けるための4つの検討ポイントをご紹介します。

資金調達の2大メニュー

4つのポイントをお話する前に、資金調達の2大メニューについて簡単に触れます。

まずデットとは、ドラマ半沢直樹で「借りた金は返すということは、子供でもわかる道理」と言ったように、金融機関からの借入金であり、期限が来たら返済しなければなりません。借り手は対価として貸し手に金利を支払います。バランスシートでは右側の上半分に記載され、「負債」の中の「短期借入金」「長期借入金」などと表示されます。

エクイティとは、投資家からの出資金であり、返済義務はなく期限もありません。出資を受けた者は対価として投資家に配当金を支払います。バランスシートでは右側の下方に記載され、「資本」の中の「資本金」「資本準備金」などと表示されます。

ビジネスを行う際には、デットとエクイティを上手に使い分け、あるいは組み合わせることが非常に重要です。

1 経営権の観点

エクイティで資金調達(=出資を受ける)するということは、その投資家に新たに株主になってもらうということです。

その分経営者の持株割合が減るため、経営に口出しされ、経営権の行使が自由にできなくなるおそれがあります。いったん外部から出資を受け始めるとやり直しはきかないため、将来のこと(上場などのEXITも含め)も十分考慮しておく必要があります。

2 コストの観点

資金調達コストは、一般的にデットよりエクイティの方が高くなります。

理由は、資金提供する側からみると、返済も金利もなく、業績悪化時には配当金も支払われないエクイティの方がリスクが高いため、リターンの要求水準も高くなるからです(=ハイリスク・ハイリターン)。

また、資金調達側からみると、デットは節税効果(注)があることも、デットの方がコストが安くなる理由です。

(注)金利は税引前利益から、配当金は税引後利益から、それぞれ支払われるため

3 資金使途の観点

経営戦略とも密接に関係しますが、何をするために必要な資金なのか、つまり資金使途は何かということです。

資金使途の例としては、創業資金、設備投資、研究開発資金、運転資金などが挙げられます。運転資金は一般的にデットで調達しますが、それ以外は両方ともあります。

ここでは資金使途に期限があるのかどうか、期限があれば長期なのか短期なのかが主な検討課題になります。

4 デットとエクイティのバランスの観点

最後は1から3のまとめになります。

経営権が脅かされずコストも安いということでデットばかりを増やしていくと、負債比率が上がり自己資本比率が下がっていくため、財務基盤としては脆弱になります。つまり、業績が悪化した場合には、自己資本比率が高い企業よりは倒産のリスクが高まることになります。

逆にエクイティは、投資家に口出しされるリスクが増えますが、業績悪化時の耐久力が高まることになります。

要するに、デットとエクイティのトータルでのバランス(これを、最適資本構成と言います)を考えながら、資金調達を行うことが重要です。

最適資本構成の比率は、業種や個々のビジネスモデルによって異なりますので、自社の経営戦略と合わせて試行錯誤しながら追求していくことになります。

一般社団法人日本パートナーCFO協会 編集部

この記事を書いたのは、
森本哲哉さん(協会認定パートナーCFO/中小企業診断士)


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