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【60年間「アートやアーティストが日常的に街にいる状態」】MATSUDO AWARD トークイベント|四方謙一(アーティスト)×三浦梨絵(学芸員/UBEビエンナーレ)

MATSUDO AWARD関連展示
四方謙一「景色を泳ぐ光」

日程:2019年10月11日(金)−12月13日(金)平日のみ
時間:10:00〜17:00
会場:松戸スタートアップオフィス

アーティストトーク
日程:2019年11月26日(火)
時間:18:30〜19:30
ゲスト:四方謙一(アーティスト)、三浦梨絵(宇部ときわミュージアム学芸員)
モデレータ:森純平(PARADISE AIRディレクター)

MATSUDO AWARDについて

<森イントロダクション>
MATSUDO AWARDの目的
PARADISE AIRのネットワーク(366組の滞在アーティスト/2019年12月現在)が育っている。今度は松戸にゆかりを持つアーティストとのネットワークを作り、今後の活動につなげたい。

初年度のアワード受賞者
ウチダリナさん、中国留学前の半年間で松戸にて活動
30万円の活動費を支給しアーティストとしてのコーディネートも行なっていく。

松戸で活動するアーティストの紹介
四方謙一さんは2011年から松戸を拠点に活動。今回のトークではその様子を話して頂く。四方さんは今年の第28回UBEビエンナーレ(現代日本彫刻展)にて山口銀行賞を受賞。
AWARDは始まったばかりだが、60年前に始まった屋外彫刻の芸術祭であるUBEビエンナーレから学芸員の三浦梨絵さんをお呼びし、60年間「アートやアーティストが日常的に街にいる状態」のお話も伺う。

展示:四方謙一「景色を泳ぐ光」

<四方謙一さんによる近作紹介>
パブリックアート
普段は金属でできた立体作品を制作している。大きな作品になることが多い。例えば、大阪梅田のマンションエントランスに設置されたオブジェや伊丹空港の屋外常設されたステンレスレリーフ≪GLOWING GROWING GROUND≫など。

写真作品への展開
立体を作ることでそこに生まれる影や、無関係だと思っていたものにも関係があると気づき、新しい展開として写真作品も始めた。
swimming in the view
立体作品=影を生むもの
写真=影を収集したもの
写真のアクリルカバーに映り込む、展示することで新しいレイヤーが付加される。出来上がった写真は展示場所とあまり関係なく、もとの立体作品と写真と空間はバラバラではあるが併置させることでつながるあり方、に興味を持った。
形状を追う以前〜実験期間を2年かけて〜写真・アクリルカバー(フォトグラム)とすることで、場所との呼応が生まれる展示とした。

他のアーティストとの協力
写真作品を始めたときには、松戸を拠点に活動する他のアーティストにも意見を求めながら制作。また、写真は素人だったのでPARADISE AIRのフォトグラファー・加藤甫さんにも相談して現在の作品の作り方にたどり着いた。

<森コメント>
展示に来たお客さん以上に、作家自身が自分の作品に起きていることに対して感動していることが興味深い。PARADISE AIRの滞在アーティストにも自分の作品から新しい気づきを得てくれることを期待している。

松戸にある作品
鏡面の内部に外の景色が写り込み増幅する立体作品≪Assimilated View≫(松戸21世紀の森と広場・中央入口前)。
子供がおもちゃと捉えるか?作品と捉えるか?が面白い。大人は中に入り込んだりしないが、子供はもっと自由に作品と触れ合っている。
野外彫刻プロジェクト「SiTE2015」にてテンポラリーの予定で制作したが、今もなお同じ場所に展示中。

UBEビエンナーレでの作品
出展作品≪collecting view in the well≫では、作品自体に景色が映り込むことを探求、井戸をイメージして鏡面を合わせ鏡に積み重ねた。
→朝焼けの景色を立体に留めることに成功!三浦さんが朝5時に撮ってくれた写真に感動した。
宇部はレトロな町並みが特徴的、街のいたるところに屋外彫刻がある。街の人も作品・作家が近いと思っていそう、作家に気軽に話しかけてくれる雰囲気だった。
→彫刻を作るにはとても時間がかかり、重機での搬入や、耐久性も必要とされる。それらのことに街の人も理解があると感じた。

今後の展開
地球そのものにドローイングする「ランドアート」に興味があり、その場にある素材そのものを材料として使ってみたい。このアイデアは(地球にある素材を抽出して造形する)彫刻の逆だと思っている。

60年間「アートやアーティストが日常的に街にいる状態」UBEビエンナーレのこれまで

<三浦梨絵さん>
宇部ときわ公園/ときわミュージアムの学芸員。UBEビエンナーレの運営を担当。

宇部の歴史
宇部の街:山口県の空の玄関=宇部空港があるので東京は実は近い。
炭鉱で栄えたが、第二次世界大戦にて焼け野原に。戦後、市街地は復興し工場が立ち並んだ一方で、世界一粉塵の飛ぶ公害の街になってしまった(1951年)。
官学民(宇部方式)で公害問題を解決。1960年、粉塵量は1/3となった。

花いっぱい運動
戦後市民が主体となって起こった緑化運動。「食糧難のときに花なんて」等の反発もあったが公共空間に花など緑を植え続ける人たちがいた。
花の種を買う資金集めの余剰分で彫刻も買い(園芸用のレプリカではあったが)、公共空間に設置。それらが人の憩いの場になった経験から、次はレプリカではなく本物を・・という機運が生まれた。

第1回宇部市野外彫刻展開催(1961年)
宇部市の図書館長が神奈川県美術館(鎌倉)の館長と友人で、協力をとりつけ、東京で行われた彫刻展の巡回展を屋外で開催することに。屋内を想定した彫刻(現在よりも作品サイズが小さい)が宇部ときわ公園に立ち並ぶ風景は今とは少し異なるが、UBEビエンナーレの原形となった。

UBEビエンナーレ:2年に1度開催
1回の公募に300点ほど集まる(減少傾向)。作家から模型を提出してもらい審査。応募の際の送料と応募料(模型返送用の輸送費用)は作家が負担。
選ばれた作家達は半年〜1年かけて実寸で制作し、現地で展示することができる。
出来上がった完成作品の中から10程度の賞が選ばれる。2007年からは国際展化、海外アーティストの受賞者が増えている。海外都市でのPRにも力を入れている。

宇部:彫刻のあるまちづくり

1962年の作品≪Ant Castle(向井良吉 作)≫から、大賞(宇部市賞)・宇部興産グループ賞を受賞するとときわ公園の園内もしくは市内に常設となる。審査用に展示されている作品群&常設作品郡は朝晩問わずいつでも市民が鑑賞することができる。
まちなかには約400体の受賞作品が設置されている。作家の技術を子どもたちがするワークショップや設置の様子を映像化するなど、設置の際には作家と市民の交流を促している。

こども
宇部市民の小学4年生(年間およそ2000人)は必ずときわ公園の作品を見る授業がある。学芸員やアーティストが小学校に出張授業を行ったり、、野外彫刻をテーマにしたコンテンポラリーダンス発表会(宇部はダンスが盛ん)を行なうなど。触っても良い作品、触ってはいけない作品等、鑑賞の仕方も教えている。
→子どもたち向けの彫刻作品づくり等のワークショップをすると、とても独創的。立体作品を作り出したり、創意工夫ができる子が育っているかもしれない。
→宇部出身作家を育てたい、ということではなく。もっと広義にクリエイティブな人材を育てる土台ができている、かも。

ボランティア
熱心な市民ボランティアに支えられている。作家に直接インタビューして、ボランティアガイドに活かしている人たちも。
「うべ彫刻ファン倶楽部」は清掃ボランティアで活躍。2年かけてみんなで市内のすべての彫刻作品をきれいにするという活動を行っている。
→掃除を行なうと、作品への愛着や理解度が格段に上がるという効果も

<質問タイム>
・60年の歴史の中、いちばんの危機は?
宇部市の市長が変わるときはドキドキする。「UBEビエンナーレを考える会」では市民からの声として、彫刻文化は財産なので続けてほしい、の提言を頂いた。
ビエンナーレをやめるという議論はこれまで無かったと思うが、助成金の額によって規模に変化があったりする。

・彫刻に関わり続けてきて、興味があることは?
彫刻との楽しみ方はほとんどやり尽くしてきたが、、まだできていないことはあるはず、それを考えて実行してみたい。

・AIRについて
野外彫刻を制作する若い作家が減っている。裾野を広げるための取り組みとして、UBEビエンナーレでもアーティスト・イン・レジデンス部門がある。

・松戸が宇部のようになるには?
アートが絶対かと言われるとわからないが、、PARADISE AIRの活動がなにかのきっかけにはなっていると思う。

アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」の持続的な運営のために、応援を宜しくおねがいします!頂いたサポートは事業運営費として活用させて頂きます。