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【実のところ単なるアーティスト・イン・レジデンスではありません。そこに居合わせるあらゆる人が雑多に集まったコミュニティーなのです。】LONGSTAY Program 2018 + Comeback 2019|アリシヤ ・ロガルスカ

LONGSTAY Program 2018
SHORTSTAY Program 2019
という2つのプログラムを通じて、PARADISE AIRでの滞在を経験したポーランド出身のアーティスト アリシヤ ・ロガルスカから、2019年度のイヤーブックに寄せられたメッセージをご紹介します。

アーティスト・プロフィール

 私がPARADISE AIRのLONGSTAY Programに参加するため初めて日本を訪れたのは、 2018年の9月でした。日本という国や文化、そして地元のアートシーンを知るために、これより素晴らしいきっかけがあったでしょうか。PARADISE AIRチームは、温かい歓迎はもとより、作品制作に欠かせないプロフェッショナルなサポートを提供してくれました。トークイベントの企画や地元のコミュニティーとのミーティング、交流会の開催や食事の提供、そして精神的なサポートまで——自分の家と、普段頼りにしている友人や家族から何千マイルも離れた場所にいる者にとって、こういったサポートはとても心強いものです。

 元は風変わりなホテルだったPARADISE AIRは、松戸駅から徒歩5分、パチンコ屋さんの真上にありますが、実のところ単なるアーティスト・イン・レジデンスではありません。それは友人や協力者のネットワークであり、地元住民やアーティスト、学生、そしてそこに居合わせるあらゆる人が雑多に集まったコミュニティーなのです。テーブルには常に席が用意され、皆でシェアできる食べ物や飲み物があり、さらにはカラオケの一曲や二曲(大概は30曲くらいになってしまうのですが)もついてきます。

 翌2019年の5月、京都芸術センターで行われた日本ポーランド国交樹立100周年記念ポーランド芸術祭2019 in Japan「セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」(のちにポーランドへも巡回)に参加するため再来日し、その時にもPARADISE AIRを訪れました。この展覧会への参加の打診を受けたのは、PARADISE AIRとの共同企画として開催された千葉県立美術館での私の個展「Singing in the Dark」を担当キュレーターが見てくれたことがきっかけでした。2019年の夏には、1970年代から現代までのポーランド人女性映像作家の作品を集めた東京都写真美術館での展覧会「Her Own Way」にも招かれ、参加することになりました。これらのことは、PARADISE AIRのサポートがなければ何一つ実現していなかったでしょう。

 ただ、私にとって何より重要なのは、そこで出会った人々であり、滞在中に育んだ友情であり、レジデンスで、オフィスで、大学で、(レジデンスのすぐ近くにある)つけ麺のとみ田で、数え切れないほどの寿司屋で、地元のタバコ臭い飲み屋で、温泉の湯船の中で、都会や自然の中を散歩中に、街や神社で行われた祭りの最中に、人々と交わした様々な対話です。

 そして今私は、ロンドンにある自宅で、またいつの日か最高の楽園(パラダイス)である松戸に戻れることを夢見ながら、朝食の納豆を食べ終えようとしています。

アリシヤ ・ロガルスカ

(翻訳:田村かのこ、佐藤慎一郎 / 写真:加藤甫 2019)


原文(英語)はこちらから。


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