様々な違いがあることは、日本のAIRの豊かさを示している。


岡本純子(公益財団法人セゾン文化財団 プログラム・オフィサー)

PARADISE AIRとのピアレビューを通じ、アーティストに豊かな時間を過ごしてほしいという目的は当財団とも一致しているが、手法は様々な面で対照的であることがわかった。


まず、PARADISE AIRは施設が個性的だ。元ホテルだったため、部屋ごとに内装が異なり、ファンタジックな部屋、カントリー調の部屋、ロマンティックな部屋など、バリエーションが豊かだ。また浴室とトイレが独立しており、風呂場が広いのがとても魅力的だ。1日中リサーチを行って疲れて帰ってきても、広いお風呂でゆっくり疲れをいやせるのではないだろうか。

ピアレビューで一番印象的だったのは、PARADISE AIR ではLONGSTAYのアーティストの最終選考に、スタッフや専門家のほか、自治会、松戸市、オーナーのパチンコ屋の方など多様な方が参加し、かつ公開されていることだった。地域の方に選考に関わったり、選考過程をご覧いただくことにより、関心を高めてもらうとともに責任も感じていただくことができ、LEARNプログラムでアーティストと街の人が関わる際にご協力を得られることにつながっているものと思われる。

SHORTSTAYは常時、公募しているのも、アーティストにとっては好都合であるが、当財団も含めてあまり多くないのではないだろうか。

また、全員が見ているメッセンジャーグループによって滞在アーティストのサポートを行なっているのも、1人1人の負担を軽減でき、様々な知恵が出し合える強みがあると感じた。

PARADISE AIRから街に働きかけているため、地域に根付いてきている実感もあるようで、街からの要望で、松戸駅の地下道の壁画が、滞在アーティストによって描かれてきていることにもつながりが感じられる。地域の人からの差し入れや協力の申し出もあるという。

アーティストには成果を求めないため、これまで評価は行ってこなかったと聞いたが、評価は自らの活動を振り返り、より良いものにしていく手段でもある。外部の人の視点を取り入れるのも有効だ。特色あるAIR事業を行っているPARADISE AIRだからこそ、評価についても独自の手法を編み出していってもらいたい。

最後に、PARADISE AIRと当財団のAIRに様々な違いがあることは、日本のAIRの豊かさを示す一例でもあると思う。今後も特色あるAIRが増えていくことを願う。

プロフィール

岡本純子
美術大学卒業後にコマーシャルギャラリーに就職。非営利団体での芸術に関わる仕事、若いアーティストとの関わりを求め、セゾン文化財団に転職。プログラム・オフィサーとして、アーティスト支援や、舞台芸術の環境改善事業支援に携わってきている。「横浜市創造界隈形成推進委員会」委員。飼っていた猫、地域猫と親しむうち、猫の役に立ちたいと思うようになり、横浜市動物適正飼育推進員となった。

アーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」の持続的な運営のために、応援を宜しくおねがいします!頂いたサポートは事業運営費として活用させて頂きます。