Nobelber 6th—気まぐれの特権

 都会暮らしの特権のひとつに、当日券を買える自由、があると思う。
 最寄駅に足を運べば、十分も待たず電車は来る。
 行き着くさきは人と文化と商業の稠密地帯。
 イベントのポスターだとか、気になっていた映画だとか、名前も知らない画家の回顧展だとか、目を開けていればなんだって、思いのままに。

 どこへも行ける。だれとでも。ひとりでも。
 都会は見てもらいたがっている。
 ひしめき合った扉の向こうをのぞきたいなら、窓口はすぐ横に。

 気まぐれは叶えられるもの。
 財布の中の二千円を、今日はどの鍵と換えようか。

Nobelber 6 お題「当日券」

※お題は綺想編纂館(朧)さま主催の「Novelber」によります。

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