【文披31題】橋架ける鳥【Day7. 洒涙雨】
巣の材料をあげる代わりにあの人の涙を晴らしてほしいと、はるか昔に彼らは言った。
一度は捨て置かれた身なのだからそこまで尽くしてやることもない、と思った。牛や織機というものはどうも義理堅くできている。
柔らかな毛、金糸に銀糸。
受け取ったものの値打ちくらいは働こう。
天の川に雨が降る。
橋が流れる。
二人は嘆く。
彼らも嘆く。
天の川に雨が降る。
橋が流れる。
ならば新たに橋を渡そう。
やわらかなうつくしい巣で育った子供を率いていこう。
二人の星が向かい合う。雲に隠れて、雨を逃れて、牛車の内へ。
月が傾く。
紗の下にこぼれる二人の涙が天の川の嵩を増す。
また一年。約束を果たせる日はおあずけだ。
また今年も。また今年も。
二人の星は涙する。
やわらかなうつくしい巣で育った子々孫々が、また一年間知恵を絞る。
元来は煌めきをちょいとつまんで軽やかに生きる鳥なのに。
このかささぎが、らしくない。地に足を着けるなんて。毎年橋を築くなんて。織機や牛に絆されるなんて。
綺想編纂館(朧)さま (Twitter: @Fictionarys ) の企画「文披31題」への参加作品です。
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