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"P-Achira" 詩集

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稲見晶がnote上で発表した詩をまとめたマガジンです。内容は随時追加します。
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記事一覧

蛇神の腹

夜が訪れるのは蛇が世界を飲み込むせい 朝が訪れるのは蛇の卵から世界が孵るせい 微熱のように…

稲見晶
7か月前
4

2024年1月26日

枯れ枝に満月が引っかかっていた 枯れ枝は困った顔でザワザワと揺れていた 明朝にはつめたく透…

稲見晶
8か月前

ただの顔見知りの猫

カーテンを開ける お向かいの猫が窓の外を見ている 目が合う 目が合っている ゆっくりまばたき…

稲見晶
8か月前

チョコレートのもしも

名称:チョコレート(カカオ60%未満) 効能:さみしさによる心のかじかみ、いらいらの緩和 用…

稲見晶
8か月前
2

猫の目

もっともふしぎなものを、といわれたら 猫をいっぴき連れていこう 窓の外を眺めるようすをそっ…

稲見晶
8か月前
1

祈ること

平穏を幸福を健康を繁栄を安寧を 祈る先は 神でもなく天でもない 私やあなた ひとりひとりの真…

稲見晶
8か月前
3

朧月

朧月 葡萄色の空 桜の内の無響 無窮無辺の靄を泳ぐ 奉る 人性を 奉る 定命を またたきととこしえをひきかえに ましろを過ぎれば空隙さえ忘れよう 常世はひたひたと われらを填めんと滲みてゆく

三月四日

気を付けろ 桜が咲く もうじきに咲く 唐突に咲き空を覆う ひとびとの冬の目が無防備なまま …

稲見晶
1年前
2

かさこそと音を立て
まるまった小さな落ち葉が足元を駆けていく
どこへ帰るつもりなの
きみの家はもうないのに

稲見晶
6年前
2

鋼の日より

今日は世界がまるで鋼だ 草葉はそよと揺れもしない 空は酸化し鈍(にび)の色 啾啾と落ちる磨…

稲見晶
6年前
4

淡春とける町に思う
恋なるものはもしかすると桜餡に似ているのではないかしら

稲見晶
6年前
2

運命

だれかを好きになればなるほど私は自分を嫌いになる 繋がる糸を幾重にも手に巻きつけて懸命に…

稲見晶
6年前

REPTILE

Sulphurの蒸気立ち込める 爬虫類が造る陸のまぼろし ヒトが浮世に倦まぬように * 鰐は果実の…

稲見晶
7年前
2

蒼い薄曇りの下 桜は零れる月光の可視化 季節を洗う水の匂い 満月の輪郭は虹色