世界から何かが消えたなら
私の好きな本に「世界から猫が消えたなら」という本があります。
ざっとあらすじをいうと、もうすぐ死んでしまう主人公が、何かを世界から消す引き換えに自分の寿命を延ばすお話です。映画や携帯電話など様々なものが世の中から消えていく中、唯一主人公が消さなかったものは猫でした。
なぜ主人公は猫を消さなかったのかって思いますよね。
まずこの世界では、消されたものは思い出ごと消えるんです。携帯電話は元カノとの思い出が一緒に消えます。映画は友人との思い出が一緒に消えます。いい思い出も嫌な思い出もすべて平等に消えてしまうのです。
じゃあ猫を消してしまったら?主人公の家族の記憶や思い出が消えてしまうんです。主人公は飼っている猫のキャベツの前にレタスという猫を飼っていました。主人公の母もレタスも癌で亡くなってしまっているんです。主人公は世界から猫を消すことは自分の家族という存在と記憶を消してしまうことだと気づいたんです。
つまり、何かを消すというのは大きな代償が与えられるということなんです。
これを読んでいる人も恐らく消してしまいたい過去や記憶があると思います。私も当然あります。やり直したいこともあります。でもその記憶や思い出もある意味いい思い出なのではないかと思うんです。
何もかもをポジティブに受け入れろとは言いませんが、視点を変えてみるということをしたほうがいいかもしれません。
主人公は恐らく、一つ世界から消すたびに様々なことを考えたでしょう。そしていろいろな視点から思い出を振り返ったことでしょう。
主人公が猫を消さなかったということは、自分の嫌な思い出と向き合って受け入れることが出来たということです。そして前を向くことができたんです。
自分なら世界から何を消したいのか。消した後世界と自分はどうなるのか。少し考えてみても面白いかもしれませんね。