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サブカル厨がありきたりな理由で別れるスカッとJAPAN の感想

オタクが騒いでいるのをよく見かける映画「花束みたいな恋をした」を観た。とてもマゾい、それでいて色々引っ掛かる映画だった。

この作品は数少ない、オタクも楽しい実写恋愛映画だ。それには3つ理由がある。
①主演の二人がサブカルオタクで若干キモいから
②やりすぎな程登場するカルチャーアイテムがオタクに優しいから
③映画冒頭で別れることが示されるために観ていて辛くないから
である。つまり、端的に言えば「サブカル厨がありきたりな理由で別れるスカッとJAPAN」だ。

オタク

①この映画には、あらゆる箇所にサブカル厨、オタクの嫌なところが滲み出ている。マウントや過度な逆張りもだが、なによりファッションでカルチャーを好きになっているように見えるのが最高に痛いところを突いている。特に男側は田舎から出てきて、アイデンティティとしてサブカルを着ているのが見え透いている。それ故にパズドラ堕ちはスカッとJAPANポイントが高い。(それはそうとして、この映画パズドラに失礼すぎるだろ)

サブカル

②時代やキャラクターを表すためにたくさんのカルチャーが登場するのは楽しい。が、ラインナップが、オタクくん気持ち悪いよ、と指差されているようでなんだか素直に楽しめない。例えば、押井守、ゴールデンカムイ、ゾーラの里で積んだゼルダBotW、あたりは知名度重視のアイテムだから別にいいとして、本棚、音楽、特に「羊文学・長谷川白紙・崎山蒼志」はとても嫌な気持ちになった。ディティールが身近過ぎて嘔吐する。

話す人によって嫌悪感を抱くカルチャーが違うらしく、例えば芸人好きによれば、天竺鼠というチョイスは絶妙らしい。それは、Wikipediaによると、最近のサブカル厨をキメラしてそれっぽいキャラクターにしているかららしい。現実にこんなてんこ盛りなオタクはそういないが、幅広いオタクに対してフックになるキャラクターというのは上手く、これが多くの人が語りたくなる理由であると思われる。

スカッとJAPAN

③バカップルが別れるのは最高だぜ!ガハハ!と観ていると、意外とオタクの在り方とか、好きなことで生きていくとか、考えさせられることもある。例えば、オタクの在り方。何故二人が別れたのかといえば、様々な理由があるが、一番は趣味への熱量の差だったと思う。男側が環境の変化で仕事が生きがいになったとか、シンプルに忙しいとかあるけど、ゴールデンカムイを読まなくなったのを見るとシンプルにサブカルが好きじゃなかったんだと思う。

そして、この差はどこから来ているかというと、二人の生い立ちにあると思う。男側がサブカル好きなのは、田舎から逃げ出すために適当なアイデンティティが欲しかっただけで、別に何の趣味でも良かったんだと思う。一方女側は家族から逃れるために、カウンターカルチャーを好きになる必要があって、それで好きになっているので強度が高い。仮に二人の立場が逆なら、こうはならなかったような気がする。

おわり

この作品は表面的には、あるあるが詰まった恋愛映画としても楽しめるけど、それだけではなくて「趣味を続けることの難しさ」、「好きで食べていくことの難しさ」、そして何より「コミュニケーションの難しさ」のしくじり先生として、良く出来た映画だと思った。

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