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今日の短編小説

真夏の夜、涼子は一人暮らしのアパートで過ごしていた。窓の外は蒸し暑く、街灯の明かりがぼんやりと照らしている。エアコンの涼しい風が部屋の中を巡り、涼子は少しだけ快適に感じていた。

部屋の片隅には、小さな白猫が丸くなって眠っていた。名前は「シロ」。涼子が一人暮らしを始めて間もなく保護した猫で、いつもそばにいてくれる大切な存在だ。シロの柔らかな毛並みは、まるで雪のように白く、触れると心が和む。

「シロ、今日は暑いね。」涼子はエアコンのリモコンを手に取り、風量を少し強くした。白猫は耳をピクピクと動かしながらも、依然として眠り続けている。

ふと、涼子は机の上の白熱灯を見つめた。古いスタンド型のライトで、祖母から譲り受けたものだ。黄色い光が部屋を柔らかく照らし出す。白熱灯の温かみのある光とエアコンの冷たい風が、奇妙に調和していた。

涼子は白熱灯のスイッチを入れ、本を開いた。ページをめくる音が静かな部屋に響く。祖母が愛した本の一冊で、いつもこの時間になると涼子は読み返していた。

突然、白猫のシロが起き上がり、涼子の膝に飛び乗った。涼子は微笑み、シロの頭を優しく撫でた。「シロ、ありがとう。君がいるから寂しくないよ。」

シロはゴロゴロと喉を鳴らし、再び丸くなって眠り始めた。涼子はエアコンの涼しい風と白熱灯の温かい光の中で、シロのぬくもりを感じながら静かな夜を過ごした。

その夜、涼子は幸せな気持ちに包まれながら眠りに落ちた。エアコンの風、白猫のシロ、そして白熱灯の光が、彼女の心を穏やかにしてくれたのだった。

今日のワードは
エアコン、白猫、白熱灯

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