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メタノールナイツストーリー Blue 20話

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第弐拾章 ハイパーエキセントリックダブルヘッダー

「うぐぅ……」

 土曜、朝。
 アルポの通知画面を睨みつつ、オレは唸っていた。

[11:30 稲輪里美 ランチ]
[14:00 西野美海 映画]

 西野から輝咲雅夫監督の話題作、『軟件探偵団(ソフトウェアディテクティブ)』のチケットを貰ってうっふぁうっふぁしながらの帰り道、バスに乗り込んだオレは、何者かにガッシと手首を掴まれた。

 「なんぞ!?」と振り返ると、何度かバスの中で遭遇していた黒髪眼鏡細身小柄微乳のおJK(お嬢様JK)様だった。

 黒髪眼鏡(ry は、顔を赤らめつつ、より強くオレの手首を握りしめてくる。細い指は意外と力強く、オレは気圧されていた。

「あの、さ」
「ふ、ふゃい!」

 何処からでたのかわからないような声が出た。

「この前のお礼がしたいんだけど」

 おれい?
 御霊、オーレ!?

 脳内ではフラメンコが展開され、上気した頬と潤んだ瞳で女子に迫られるというシチュエーションに、ちょっとしたパニックになっていた。  

「土曜日、空いてる?」
「空いてます、空いてます!!」

 なにやってんだ、僕は! その日は西野と待ち合わせの日じゃんか!
 不幸中の幸いは、時間がカブっていない事と、どちらも待ち合わせ場所はターミナル駅隣接の大型商業施設、「マリンサイト」だった事だ。現地である商業施設、「マリンサイト」は、様々なショップやカフェやレストラン、シネコン等を擁するこのあたりの娯楽の中心だ。

「しかしこれは……」

思わずひとりごちる。

「ダブルブッキングは避けられたけど、ダブルヘッダーかよ」

 地元駅から3駅のターミナル駅は、商業施設である「マリンサイト」と同じ「マリンサイト駅」という。その名の通りベイエリアにあり、海沿いの眺望が差別化要因となり、同じ松井不動産商業マネジメント株式会社系の商業施設の中では最も人気があり、近県のみならず遠方からの利用者も多い(オヤジ談)。
 つまり、鉄板デートスポット。
 タイプの違う美少女二人とダブルヘッダー。

 なにこのリア充、タヒねばいいのに……って、僕じゃないか。不健全な上半身と健全な下半身を持つ普遍的な中学生である僕にとって、可愛い女子とのおデートというのはやはりドキドキだ。
 待ち合わせ場所である中央広場時計塔の前。時間は11:15。少し早かったか―――

「高木くん」

 呼ぶ声に振り返ると、ネイビー×ホワイトのシンプルなワンピースにサンダル姿の稲輪里美がいた。すっきりとした胸元のラインが、そこはかとない清潔感を醸し出している。うん、控えめなお胸もイイね! 大きさやカタチの差別、イクナイ!! 全ての乙πはふつくしいッッ!!

「高木くん? おーい! 高木くーん!!」
「おっぱ! あ、ごめん 待たせちゃった?」
「え? あ……ううん、私も今来たところ」

 と、大きなキャンバスのトートバッグから覗く、よく見慣れたモノに気づいた。

「稲輪さん」
「里美でいいよ。苗字呼びとか、かえってこそばゆい」
「そっか、じゃあ里美さん。ところでそれって……」
「ん? ああ、オクトパスだけど、それがどうかした?」
「いや、里美さんもオクトパス、持ってるんだね。っていうか、なんでオクトパス? ヘッドセットなんて、外じゃ使えないっしょ?」

 まぁ、僕も今、この後の西野との約束のために持ってるわけですが。

「うん? 『も』ってことは、高木くんも持ってるの? オクトパス」
「僕もユーリでいいっすよ。うん、持ってますよ」
「それならさっきの質問は愚問ってヤツじゃない?」
「もしかして、『軟件探偵団』?」
「もしかしなくてもそうよ。マリンシアター上映分のチケット、発売開始時間ジャストで購入ボタンをタップしたのに、ギリギリだったからね。あ、そういうワケで、悪いんだけど食事の後は、あんまり一緒にいられない感じなんだよね……」
「えっと、何時の回?」
「14:30からの回。だから14:00には行かなきゃなの。ホントごめんね。私から誘ったのに」

 お……おぅ……

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