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博士の愛した数式【読書感想文】

美しい物語でした。
最後の一文を読み終わった瞬間、胸がじんわりと熱くなるような、心満たされる思いになりました。

お話のあらまし
記憶が80分間しか持たない、元数学者と家政婦、そして彼女の息子が織りなす、様々な出来事を温かく描いています。
毎朝、それまでの記憶を失ったことに気づき、悲嘆にくれる博士。それを受け止めながら、博士の語る美しい数式に耳を傾ける家政婦。
博士の愛を一身に浴びる、頭の上が平らだということで、ルートと名付けられた少年…。


ルートへ向けられる博士の愛があまりに尊く、胸のなかに澱む様々な仄暗い何かが、全て浄化されていくような心持ちになります。

物語が始まって間もない数行に、心が静かに共振を始めます。

いつどんな場面でも、博士が私たちに求めるのは正解だけではなかった。何も答えられずに黙りこくってしまうより、苦し紛れに突拍子もない間違いを犯した時の方が、むしろ喜んだ。そこから元々の問題をしのぐ新たな問題が発生すると、尚一層喜んだ。彼には正しい間違いというものについての独特なセンスがあり、いくら考えても正解を出せないでいる時こそ、私たちに自信を与えることができた。

博士の愛した数式

いくら考えても正解を出せないでいる時こそ、私たちに自信を与えることができた。

その一文に触れたことで、お話の中に存在している博士にわたしも会いたいと思いました。博士のことがもっと知りたくて、続くページを次々とめくっていきました。

少年ルートが怪我をした時に見せた博士の恐れと勇敢さ。プレゼントを受け取る時の心を震わすその有り様。
博士、家政婦、少年ルート。3人のお互いを思う心が、どんな時も博士の小さな家の内を、愛でいっぱいに満たしていました。

そんな数々の温かなエピソードが繰り広げられながら、2人の存在すら博士の記憶には残りません。
辛い現実が背景にあっても、3人は終始愛によって時を積み重ねていきました。

80分しかもたない記憶。
過去も未来もなくその時だけを共に生きる関わり。

愛は量でも、時間でもないんだ。
その瞬間その刹那に、互いを尊重し愛することの尊さを思いました。


一度その物語に触れると、何度でも読み直したくなる、心の滋養のようなお話です。


映画にもなっているお話ですね♪

スクリーンでも観てみたかったと思いました☺️

DVDを探してみようかな?


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