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~柳川の人に聞く~ Vol2.黒田淳一郎さん(黒田屋)

今回取りあげるのは、自分の店を“なんちゃってケーキ屋”と称する黒田淳一郎(じゅんいちろう)さん。

御花の目の前に店を構えてなんと143年の歴史を持つ「黒田屋菓子舗」の4代目店主です。町の人からは「淳ちゃん」の愛称で親しまれています。


伝統の味「千代香」

もともとは和菓子のみを取り扱っており、黒田屋の代表的なお菓子「千代香」だけでなく「御花もち」というお菓子もあったそう。先代が直接立花家と交渉し、御花の名前を使わせていただけるようになったのだとか。

伝統のお菓子“千代香”
蝶のようなフォルムが美しい

他にも、千代香と誾千代姫を掛け合わせた「ぎんちよか」というお菓子も作ったことがあるらしく、どちらもどんな見た目でどんな味なのか。気になります。


運命変えた親父さんの助言

淳ちゃんが18歳の時に全国に生クリームが普及します。親父さんからの「これからはケーキの時代だ!」という助言により、東京の専門学校でケーキ作りを学びます。

若かりし頃の淳ちゃん。バイク乗り回してたらしい。

卒業後は東京のレストランでパティシエとして数年働き、柳川に戻ると和菓子一本だった黒田屋に喫茶スペースをつくります。現在でも、淳ちゃんの作るバースデーケーキやウエディングケーキは大人気です。

取材のほぼ半分を「てきとーよ」で返すスタイルに記者である僕も頭を抱えてしまいました。

どのケーキも「てきとー」には見えない。

しかし、お店に飾られているのは到底「てきとー」には見えない創作ケーキの写真の数々。中でも松濤園を模したケーキや、冬の時期のみ作るという和菓子の繊細さには驚かされました。

冬季限定で作られる繊細な和菓子


職人、淳ちゃん

仕事のこだわりは?と聞くと「仕事してるっていう感覚がないね。好きなことがたまたま仕事になってるって感じ。」とのこと。楽しそうに話す姿からもこの言葉は本当だと感じました。

仕事の中で嬉しい瞬間は「(お菓子が)うまく仕上がったとき」。そのコメントからは、普段はめったに見せてくれない職人気質が。

現に淳ちゃんのウエディングケーキはバラエティに富んでいます。チョコペンで書いた文字の写真を見せてくれた際には「鉛筆よりチョコペンの方がうまく書ける」というホントかウソか分からないボケも披露。さすが愛されキャラの淳ちゃんです。

精巧に作られたウエディングケーキ
“趣味で”作ってる激うまアイス。
地元の人も「なんで売らんの」と言うほど。


シャイピーポー柳川人

そんな淳ちゃん、「柳川は郷土愛が強い人が多い」と話します。その意見には僕も賛成。もちろんこの地を離れる人も一定数いますが、僕があってきた人は淳ちゃんをはじめ、みんな柳川のことが好きという人たちばかりでした。

僕にとっての「まちづくり」は「街に住む人が、その街のことを好きと言える環境づくり」です。そんな環境ができれば、自然と人が集まりやすくなるのではないか。と考えています。

意外とシャイな人が多い柳川。もっと声を大にして「この街が好き!」と言ってみてもいいのではないでしょうか。

もちろん御花へは徒歩移動。
何十年もこうしてウエディングケーキを作っています。

今回お話を聞いた人…黒田淳一郎さん
1962年12月5日生まれ。黒田屋菓子舗4代目店主。
東京の専門学校卒業後、世田谷にあるお菓子屋「たちばな」に就職。銀座にあった伝説の洋菓子や「エルドール」のパティシエからもお菓子作りを教わる。和菓子やケーキだけでなくアイスも作れる敏腕パティシエ。だけど巷では「世界一パティシエに見えないパティシエ」と言われているとかいないとか。

※この記事は2022年6月発行の「すがわらばんも」第2号に加筆修正したものです。

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