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そんなものかよ、写研。

2019年2月27日、私は写研という会社に失望した。
そのあまりにも「既存顧客のみを重視しすぎている」と捉えられる企業姿勢に対してだ。

写研はかつて、その美しい書体と組版システムで日本を彩った業界トップシェア(1991年当時, Wikipedia記事より)の写植機メーカーであった。しかし、「当社の書体と写植機の組み合わせによる正しい組版環境の提供」を目的に、長年PC用フォントをリリースしてこなかった。その間、競合他社はPC用フォントの提供や現代的サブスクリプション料金モデルの提供によって着実にシェアを拡大。1998年に写研はモリサワ社にシェアを奪われている。

そんな写研が2011年7月、ついに「OpenTypeフォントリリース予定」と発表したのだ。(レポート記事1, レポート記事2)
しかし、今は2019年。平成ももうすぐ終わろうとしている時局だ。写研からOpenTypeフォントはリリースされただろうか?否、していない。
8年経とうとする現在、写研のOpenTypeフォントは未だにリリースされていないのだ。一説には創業者のご令嬢である「2代目社長がデジタルを忌避しているからではないか?」との噂が立っていた。(個人ブログ記事)
その後「2018年10月に2代目社長が逝去され、創業者一族でない方が3代目社長に就任していた」という事実が判明する(記事)も、OpenTypeフォントはリリースされなかった。

しかし、私はとんでもないものを見つけてしまった。
ツイート1, ツイート2, ツイート3
上記の一連のリンクは、ある方が写研社に電話で問い合わせを行った記録である。
「一社員の見解である」という前提を考慮し、若干の推測を含めて要約すると、以下の内容になるらしい。

すでに(OpenTypeフォントのリリースに)必要な作業を完了しているので早期にリリースしたいところだが、既存の(写植機の)顧客からの反対などがあり、見通しが立っていない状況である。
 - 写研社員



私は「老舗故のジレンマ」を写研も抱えているということを知り、それに失望した。「未来へ進むのに、足を引っ張る存在がこんなにもいるのか」「未来の顧客よりも今の顧客か」「2020という大きなチャンスを逃すつもりか」我が脳内のシュプレヒコールが鳴り止まない。
もったいない。もったいなさすぎる。

私にとって写研書体は「他社を圧倒する美しさ」を持つと考える。だが、世界がそれを目にする門戸が事実上開かれていない現在、写研にとって大いなる「宝の持ち腐れ」となっているのも事実。
来年、世界の国民(くにたみ)が四方(よも)の国より東京に集い来る。世界中の人々に、写研の美しい書体を見てもらう大いなるチャンスの到来である。それをみすみす逃してしまっては、今後いつ写研の完全復活が叶うか難しい。


兎にも角にも、義理と誠意を尽くして、前に進んでいただきたい。
お願いします、南村社長。


【2021/1/18追記】
モリサワ OpenTypeフォントの共同開発で株式会社写研と合意
このニュースを、多くの人々が待っていた。
ありがとう、写研・・・
ありがとう、モリサワ・・・

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