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「ヤバい、思い出すと泣きそう」を聴きたくて

人にはドラマがある。そして、ドラマは匂い立つ。そんなことをふつふつと感じてる最近。そして、もっともっと、ドラマを感じたいと思った話。


先日、タカさんと話す機会があった。

わたしが働いているジェネシア・ベンチャーズにはGP(つまりボス)が二人いて、全体&日本チームは田島さん、海外チームはタカさんという役割分担。タカさんは普段ジャカルタに住んでいて、毎週の経営会議ではオンラインでつながるものの、接点は多くない。ましてや二人で何時間も話すことなんてこれまで一度もなかった。

そんなタカさんが、しばらく日本に滞在することになって、珍しく話すかーということになった。

わたしたちは、日々の仕事やチームについての話をひとしきりしたあと、どんな流れだったかは忘れたけど、「コンプレックス」の話をしていた。わたしは、そりゃあもうコンプレックスまみれの人生である、という話をした。タカさんはたぶん、「ふーん」みたいな感じだった。

「タカさんはコンプレックスとかあるんですか?」とわたしも尋ねると、「そりゃあるよー」と言って、タカさんは、学生時代のサッカーの話、そして新卒研修の話をした。

ずっと一番になりたかった、でもなれなかった、という挫折の話。そんな自分にも期待をかけてくれる人たちがいて、もう一度チャレンジする機会があったけど、「一番になるってことはこんなにもしんどいことなのか」ということをまざまざと突きつけられた、というさらなる挫折の話。

その二度目の挫折は新卒研修のときで、タカさんは研修施設の裏で、悔しくて一人で大泣きした。そういう話だった。

「・・ヤバい、思い出すと泣きそう」

と、タカさんは言った。わたしはたぶん、「そうかー」みたいな感じだった。ただ、わたしも、鼻の奥がつんとしてた。


大学を出て、就職した、22歳の4月。

例えば、タカさんが着ていたジャージのメーカー、履いていたスニーカーの色、緊張感、研修施設の壁の素材、キズ、汚れ、こぶし、草や木の匂い、音、光、男子たちの髪型、女子たちのメイク、風、差し伸べられる手のかたち・・

わたしは、そういうものを想像する。タカさんの心情を想像する。そうすると、そういうものがなんだか匂い立って、鼻の奥がつんとしてくる。

わたしは、そういうふうに人のドラマに触れるのが好き。それで、

「・・ヤバい、思い出すと泣きそう」
「あ、イメージするともらい泣きしそう」

みたいな感じを共有するのが好き。あくまで「感じ」のときもあるし、実際にほろりとしてしまうときもある。何かあたたかいものに触れられたと思うのか、なんだか、ほっとする。


ちなみに、わたし自身にも「ヤバい、思い出すと泣きそう」な話はたくさんある。(タカさんとのこの話も、今回新しく加わった。)その上で、一つたしかなことは、その思い出はつらかった思い出やイヤな思い出じゃないということ。

たぶん、わたしを少しだけ成長させてくれた思い出。タカさんの話も、ぼっきりと挫折した経験が今の自分をかたちづくってる、結果的によかったのかもしれない、という話だった。

シンプルに、そういうものというか、人が好きなのかな。(いや、どうだろう、人はあんまり得意じゃないという自覚がある・・)


人がお互いを理解するには、・・否、「お互いをまったく別の人間だと認識する(ことによって健全な距離・健全な関係をつくる)」には、お互いの過去の話、つまり、お互いがこれまでどんなことを考えてどんなふうに意思決定をしてきたかという話をし合うのがもっともいいらしい。それは、本当だとつくづく思う。過去が、今のその人の大半を形成してる。

人生で出会うすべての人の中の、いったいどれだけの人とこんな話ができるかはわからないけど、その経験は少しずつ、わたしたちの人生を豊かにしてくれる気がする。


余談ですが、タカさんとわたしは同級生だ。

かたやボス、かたやちんちくりんで、タカさんの第一印象といえば、こわ(*_*) つよ(*_*) こわ(*_*) で、同じクラスでも絶対友だちになれないタイプだと思った←

わたしは、学生時代の友だちとも年に1-2回くらいしか会わないし、働き始めてからもあんまり同級生に縁がなかったし、勝手になんとなくちょっと遠い存在に感じてたけど、でも、やっぱり同級生っていいなって思った。「あのころ」という共通認識がもちやすくて、想像しやすくて、匂いを感じやすいんだな。

それに、こわ(*_*) つよ(*_*) こわ(*_*) な相手ともこんなふうにドラマな話をし合えるのは、それなりに重ねてきた年齢のせいかもしれなくて、なんだか、悪くないなって思った。

なんとなく思い出した、好きなマンガの1コマ。いや、4コマ。(「サトコとナダ」の4巻より)

いつでもこんなふうに、自分の過去と今をしっくりと感じながら生きられたらいいなぁ。

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