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住友銀行秘史/國重惇史/2016/★★★★☆

1990年3月~1991年7月、作者が45歳に頃に暗躍したイトマン案件に向き合う約1年半を克明に記述している。なお筆者國重氏は、49歳で同期トップで取締役、54歳でネット証券の社長、60歳で楽天副社長、楽天証券会長、70歳でリミックスポイント社長という華々しい確約を見せ、71歳で本書を執筆し、昨年78歳で鬼籍。
不正、詐欺、そして詐欺を隠すための詐欺は、どの程度えげつなく実行されるのか、取り締まる方はどれだけの覚悟や行動力が必要なのか、筆者主語ではあるものの、この本を読むとよくわかります。また銀行での出世とは何か、考えさせられます。
のちに、國重氏自身がイトマン案件当初にかなりきな臭いこともやっていたと明るみに出ていたり、本書の内容を否定するコメントも出ており、筆者を手放しに素晴らしいとは感じられなかったものの、一人の主観として描かれた作品としてこの本には面白味があると思います。

▼おすすめのヒト
・銀行業界に興味のある方
・日系大企業の派閥に興味のある方

▼印象的なコト
・今度の支店長はハイカラで、時代の最先端を行っているとお客さんに印象付けるのだ。(省略)支店は宮益坂の下にあったのだが、どの物件が何%のローンでいくら借りている、ということまでわかる。金利をもう少し安くします借り換えませんか、とそれをひっくり返した。(省略)しかし、一番効果があったのは、支店長自らの営業だった。
・私はありとあらゆる手段を駆使して石田会長やそれを取り巻く人たちがどのように動き、誰を何を話していたかについて叙法を得ようとしていた。
・のちのイトマン事件が明るみに出ると、この内部告発文章はさまざまに出回ることになる。その犯人が私である
・私にはイトマンにもディープスロートがいた。
・私は基本的に「攻め」のタイプだが、メガバンクとは「守り」の組織である。そして徹底した減点主義。
・自分は「プロジェクトチームを作るしかない」といったが、玉井副頭取は確たる返事をしなかった。
・あのとき、住友銀行がイトマンの会社更生法を申し立てていたとしたら、その後の日本の金融史は大きく変わり、改革が早まって、「失われた10年」もなかったのではなかろうかと。
・虚しい、というのとも違う。ずっと目指していたことを成し遂げたのだから。

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