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命の器/宮本輝/1983/★★★☆☆

自分が生まれるよりも前に書かれた作品。宮本氏の人生、それを全身全霊で小説というツールで表現されようとしてる、人間としての迫力を感じます。芥川賞を取るということはどんなことを、芥川賞を取った後に何があるのか、人生における本当の戦いとは何なんだろうか、そのリアルに触れることができます。読んですっきりはしませんが、鳥肌が立つような、印象には残るシーンが何度かある一冊です。

▼おすすめのヒト
・受賞した作品に興味がある方
・小説が好きな方
・刺激が欲しい方

▼印象的なコト
・(父は酒を飲むと、)いったん信用したら、決して相手を裏切らない審議熱い中国人を尊敬していた。
・押し問答の末、私はなぜか自分の気持ちとは裏腹に、五か月間を共にした「ストマイ」を人差し指でつぶした。
・運の悪い人は、運の悪い人と出会ってつながり合っていく。
・すると原田氏は、「蛍川」が芥川賞を受賞したことを、荒さんがとても喜んでいたからだと答えた。
・最もナショナルなものこそ、最もインターナショナルにたりうる。
・やっと私は、芥川賞を受賞したということが、高校野球でいえば、予選を勝ち抜いて甲子園の土を踏んだ段階に、すぎないのを知った。本当の戦いは、そこから始まるのである。それは、芥川賞を掌中にすることよりも数段苦しい孤独な道であった。

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