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桑野信介のキャラはこうして生まれた

 放送中のドラマ『まだ結婚できない男』(毎週火曜9時)の主人公の桑野信介について、「桑野は尾崎さん自身がモデルなんですか?」と聞かれることが多いので、あのキャラがどうやって出来上がったのか、簡単にまとめてみます。

 前シリーズを書き始めるときは、「主人公は偏屈で風変わりなキャラにしよう」というのがスタートでした。特に自分をモデルに、という意識はなかったと思います。自分自身が偏屈で風変わりなところがあるので、書いているうちに自然と自分が投影され、「ほとんど自分じゃないか」という感じになって行きました。

 そしてそのキャラを視聴者が面白がってくれるということがわかったので「そうか、自分でいいんだ」ということになったのだと思います。

 しかしドラマの脚本は、書くのは脚本家ですが、そこにプロデューサーや主演俳優の意見が入って来ます。桑野のキャラも多分に阿部さんやプロデューサー陣の意見が入っています。

 例えば前シリーズの第一話で桑野が誕生日にケーキを買って一人で食べようとするシーンがありますが、僕自身はそういうことをしません。打ち合わせのときにプロデューサーのT氏が「ついそういうことしちゃうんだよね」と主張し、大の男たちが「自分もするかも」「いや、そんなことするわけない」と激論を交わした末に入れることになったのです。

 以下に自分と桑野の類似点と相違点をまとめます。

[類似点]
・偏屈。自分のスタイルがあり、それが変なことであってもなかなか曲げようとしない。
・皮肉屋。常に意地悪な物言いを考えている。
・自分が詳しいことに関してはウンチクを語りたがる。
・クラシック音楽が好き。家で指揮をする。
・映画オタク。
・我が道を行くようで、実は他人の評価を気にする。

[相違点]
・部屋は乱雑。
・料理は全くしない。
・皮肉なことを考えても一応TPOを考え、誰にでも言うわけではない。
・スポーツジムは嫌い。

 僕の妻は、ドラマの中で桑野が歩く後ろ姿を見て、「あなたにそっくり」と言います。しかし阿部さんに聞いたところ、別に尾崎に似せようと思っているわけではないそうです。つまり桑野という人物像を脚本から読み取って演じると、結果として脚本家に似るという不思議な現象が起こっているのです。
 こういうことはどんなドラマでも、またはどの脚本家と俳優の間でも起こるわけではありません。やはりこのドラマは他とは違う何かがあるようです。

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