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スタートアップのM&Aに取り組む理由(社内向けのメモ書き公開)

弊社の面接お会いする方々から最近よく聞かれる質問の中で一番多い「スタートアップのM&Aより事業承継M&Aやった方がいいのでは?その中でなぜスタートアップのM&Aをやっているのか?」という質問について、けっこう多いので、弊社の人事向けなどに共有していたマクロ環境についてメモ書きをnoteに公開しようと思います。元々社内向けに作っているので、ちょっと雑多な感じですが、ご容赦くださいませ。


結論:現時点では事業承継MAの方が活況

まずは結論としては、事業承継型M&AとスタートアップのM&A(以下「SUMA」弊社では「スーマ」って呼んでます。)では、現時点での将来的な売却提案可能性のある潜在顧客の数や、成約件数などで比較すると、事業承継型M&Aの方が市場規模も大きいですし、盛り上がっています。
ただ、弊社はSUMAを日本でもっと広げる必要があると思っているので、SUMAのパイオニア的な存在になるべく、SUMAに取り組んでいます。

増加するSUの資金調達金額

出所:INITIAL Japan Startup Finance 2023H1

スタートアップ(以下「SU」)の資金調達社数・金額共に過去10年間で増え続けている。
米国などの諸外国と比較すると、リスクマネーの供給量では大きく劣るものの、日本国内だけに焦点を当てると確実に拡大基調であることは間違いない。

国策としてSUの支援を開始

政府としてもスタートアップの育成と新規の創出を課題として捉え岸田内閣発足以降「2022年をスタートアップ創出元年」として、5か年計画を立てて、目標達成のために様々な施策を展開し始めた。

出所:経済産業省 スタートアップの力で 社会課題解決と経済成長を加速する
約1兆円弱のSU投資金額を5年で10倍にする計画

経団連もSUに課題感を持つ

政界だけではなく、財界でもSUに対する課題感は強まり、経団連も「スタートアップ躍進ビジョン」を定めて5年後に、SUの社数、リスクマネーの供給量、ユニコーン企業の数など全てを10倍にする目標を掲げた。
官民一体となって、日本におけるSUを支援していくという機運が高まっている。

出所:日本経済団体連合会 スタートアップ躍進ビジョン~10X10X~

2013年以降がVC勃興期

政策としてSUが応援されていて、SUが今後増えていくという観点以外では、2013年以降にVC勃興期になり、ファンドレイズが一気に増加した。
一般的なVCのファンド運用期間は10年間と設定されることが多く、これから爆発的に増加したファンドの投資先のEXITの流れが来ると予測できる。

出所:JVCA ベンチャーキャピタル最新動向レポート

東証の新規上場にはCAPがある

過去10年間を振り返っても新規上場の件数については100件を超えたのは21年のみとなっており、基本的には年間100件弱の推移となっている。
政界・財界ともにSUを支援していく方針で、スタートアップ5か年計画やスタートアップ躍進ビジョン10X10XにもあるようなSUの数を10倍に増やすという目標に向けてSUを増やしていっても出口としてのIPOの裾野は広がらないため、M&AによるEXITは必須になってくる。

出所:ダイヤモンドオンライン 2023年IPO予想

東証は小粒IPOに警鐘を鳴らしている

直近で、東証や金融庁が小粒IPO「上場ゴール(成長性の乏しい企業の新規上場)」に対して警鐘を鳴らしており、今後は上場数を増やすよりも上場基準を厳格化して、しっかりとした成長余地のある企業しか新規上場させない方針などを検討している。
小粒IPOに対する東証の考えが厳しくなればなるほど、グロース市場に対する新規上場は厳しくなり、年間の新規上場社数は増えるどころか絞られる。
そうすると、VC勃興期からファンドレイズが増え始めて、投資されてお金を回収する方法(EXIT)はおのずとM&Aという選択をされることになる。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB172J70X11C23A2000000/

SUMAはこれから拡大していく市場(理論上5年で10倍)

日本国内のSUのM&Aは2021年で約150件、2022年は約200件程度と言われている。
事業承継型のM&Aの公表ベースされている年間取引件数が4000件を越えようとしていることを踏まえると、取引事例としては少ないですが、官民一体となってSUの市場を5年で10倍にしようとしていますので、理論上はSUMAの市場も10倍になるポテンシャルは持っていると思いますし、いまは黎明期と整理するなら、ここから5年で10倍以上の拡大余地は充分にあるマーケットだと思います。

出所:EYスタートアップM&A動向調査 2021

事業承継とSUMAは買手全然違う

私自身も事業承継型のM&Aアドバイザーをやっていた経験もありましたし、それなりにM&Aに対する自信もあったので、SUMAって最初めちゃくちゃ簡単にサクサク決まると思っていました。
しかし、実際にやってみるとそんなに簡単ではありませんでした。
簡単に行かなかった理由はいくつかありますが、ここで1つあげるとしたら、事業承継型のM&Aを検討する買手企業群とSUMAを検討する買手企業群がまったく違うということです。
この1年間の活動の成果もあって、弊社にはSUMAに関心のある買手企業群のリストが数百件以上溜まっていますが、そのリストで、私が前職の時に知っている会社はほとんど入っていないので、それくらい買手企業群が違うので、事業承継型のM&Aを生業とする会社が、明日からこのマーケットに参入できるかというとそうではないです。
実際に弊社に相談のくるVCのセカンダリー案件では、大手MA仲介会社に依頼をして成果が出なかったという案件も多いです。

EXITメイキングが出来る人材が重宝される時代

中小企業の事業承継型のM&Aは、将来収益を加味することなく純資産をベースにして、過年度の実績を考慮して価格を決めていくことが多い。
また参考になる類似取引も多く、売手買手ともに株価に折り合いが付きやすい。
そのため事業承継M&Aのアドバイザーは単純に入札してくれる会社にマッチングをするだで、案件が成約する。
一方でスタートアップのM&Aは基本的にPLは赤字が多く、純資産もほとんど積み上がっていない状況で、株主も個人、法人、ファンドなど複数に渡る。
このような状況下で、複数のステークホルダーとの折り合いを付けながら、取引事例が少なく、売手と買手で希望条件が乖離しやすいSUMAを決めるのは容易ではない。
だからこそ、いま足下でもVCからEXITを検討している案件の流入は増えてきていて、今後も伸ばしていかないといけないと思っています。

VCとの連携も強化してます。

SBIインベストメント(国内最大級のVC)、Basepartners(独立系シードVC)、ガゼルキャピタル(独立系シードVC)、ユニバーサル マテリアルズ インキュベーター(国内No.1の素材・化学特化VC)、アンカバードファンド(国内唯一のアフリカ特化VC)などと、提携を行って、投資先のEXIT支援などを始めています。


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