クリスマスの記憶
クリスマスプレゼントを置いてくれていたのは両親だったと気がついたのはいつごろだったろうか。
我が家のプレゼントの内容は、サンタの独断で決まっていた。
つまりほしいものが貰えるとは限らなかった。
親になったいまならわかる。
子供が望むものはいつだってくだらないものだし、長く愛用するとも限らない。
それにしても
おさんぽわんちゃんが欲しかった私は
合宿用の新しい大きなカバンを枕元に見つけたとき心底ガッカリした。
いまとなっては笑い話である。
一度、クリスマスに母が入院していたときがあった。
私がまだ小学校低学年のときだったが、その年にはすでに親がサンタの役をしてくれていると知っていた。
しかもプレゼントの内容から察するに、サンタの独断は母の独断であった。
なので母不在のクリスマスを、子供ながらに心配した。
父はサンタ役を務められるのだろうか、と。
オンラインショッピングも無かった時代、私たちに隠れてプレゼントを用意する術は無かったのか
それとも「独断」では決めかねたのか
クリスマスの朝、枕元には靴下に入れられたカードがあった。
いつも履いている普通の靴下が、カードの形に変形していた。
中を見るとこう書かれていた。
「クリスマスプレゼント引換券」
「ただしお父さんが居ないと不可」
わざわざ印刷して作ったカードの、なんだか名刺みたいな雰囲気と
ちょっとドヤ感あふれる文体は
いかにも父らしいなと思った記憶がある。
………
その引換券で何を引き換えてもらったかのかは、まったく覚えていない。
靴下の引き出しがやけに乱れていたことは覚えているのにな。
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