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エッセイいろいろ

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映画、本、アートのこと、そのとき折々に感じたことや、考えたことを書いたエッセイいろいろ集めてあります。
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泥棒詩人ジャン・ジュネの「女中たち」

2020年3月、日に日に感染者が増えていく新型コロナウィルスのことを考えていたら、なぜかジャンジュネの『女中たち』を思い出した。ひょんなことから発想が飛んでしまう。まあどうして繋がってしまったのかここに記してみる。 3月の初め頃のことだ。ここ数年とりくんでいるダンテ『神曲』煉獄篇を描きつつ、下記の論文を読んだ。「予防概念の史的展開 ―中世・ルネサンス期のヨーロッパ社会と黒死病―」河口明人教授  https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace

悪夢のように美しい映画!

アレクサンドロ・ソクーロフの『独裁者たちのとき』が公開になる。 日本では、イッセイ尾形が主演した『太陽』(2006年日本公開)が有名だが、わたしは以前、カンヌ映画祭金獅子賞を受賞した『ファウスト』(2012年日本公開)を見て感激した。 また、『エルミタージュ幻想』(2002年日本公開)、『フランコフォニア -ルーヴルの記憶-』(2015年制作)も壮大なスケールのロケを敢行し圧巻だった。 その巨匠ソクーロフが、今回はヒットラー、スターリン、ムッソリーニ、チャーチルをダンテ

篠田版の『沈黙-silence-』をみる。

 友人のエッセイシスト三浦暁子さんのペトロ岐部という安土桃山時代から江戸時代初期にかけてのカトリック司祭についての文章を読んだのがきっかけで、その時代のキリシタンものの名作・遠藤周作『沈黙』の篠田正浩監督版をamazon primeで観た。スコセッシ監督の同名映画が壮絶だったので、こちらはどのようなものなのだろうという興味もあった。 日本は、ほんとうに宗教的、文化的な沼地なのだろうか?  スコセッシ版のなかで一番気になったセリフ「この国は沼地だ」という言葉だった。篠田版で

シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47 を聴きながら。

https://www.youtube.com/watch?v=6VsLshXUyio シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47 この曲を聴いていると、冬木立のなかを母と二人でお散歩した時間を思い出す。美しく大きな噴水が飛沫をあげ、冬ざれた公園を子供たちが走っていく。母とわたしは、いつも文学や絵画の話をしながら欅並木を歩いた。永遠のような静謐としたあの時間を思い出す。この曲が、シューマンピアノ四重奏曲変ホ長調第三楽章Op.47だと知ったはのはつい最近のことだ。「オ

角川武蔵野ミュージアム探訪記

都心から車で50分。関越自動車道の東所沢を降り、雑木林や畑のなかに物流倉庫が立ち並ぶ一帯を5分ほど進むと忽然と古代遺跡のような建物が現れる。これが隈研吾氏設計の角川武蔵野ミュージアムだ。本が沢山ある美術館とのことで心が踊る。わたしは子どもの頃から本が大好きで、夢のなかでいつも行く本屋さんまであるくらいなので大興奮。 着いてみると美術館だけでなく、野外ではチームラボのデジタルアートも堪能出来る。館内は本棚劇場と称される高さ8mの本棚に5万冊の本が所蔵され自由に見ることができる

釣狐について

これぞ、日本が誇るパフォーミングアーツだ! とにかく驚いた! 令和二年一月五日の野村萬卒寿記念『萬狂言・新春特別公演』にお伺いした。野村万蔵さん率いる萬狂言。今年卒寿をお迎えになるお父様の野村萬先生は人間国宝であり、令和元年に文化勲章を受章された。それを祝い万蔵氏のご子息が三人(長男の万之丞氏、次男の挙之介氏、三男の眞之介氏)が、それぞれに初めての節目となる曲に挑むという、めでたいめでたい公演である。  まずは、五穀豊穣を寿ぐ「三番叟」を野村挙之介さん(次男)がはじめて舞

大分アートフェスティバル「回遊劇場」に参加中です!

11月2日まで、大分市中心街をぐるぐる回ると楽しい、アートイヴェントが開催されています。 わたしのダンテ神曲をテーマにしたプロジェクションマッピングは、ホテル日航大分オアシスタワーの天井と柱に投影されています。10時から18時までです。 こちらは、アートフェスティバルディレクターの菅野さんとご一緒に!今回インスタレーション作品が多くびっくりしました! By 蜷川有紀 #yukininagawa #蜷川有紀 #大分アートフェスティバル #回遊劇場 #art #コラム